【 自衛隊の中東派遣:情報収集と警戒・監視 】
2020/1/15、日経ビジネス電子版に「自衛隊の中東派遣をめぐる議論が示した安保法制の瑕疵」が掲載された。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/011400132/
以下はその概要。
< 議論すべきは「法の乱用」ではなく「法の不備」 >
1.中東派遣の根拠
防衛省設置法第4条18
「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」
(1)条文の表現が抽象的であいまい
(2)国会の承認が必要ない
⇒ 「乱用につながりかねない」との懸念
2.この問題の本質
「法の乱用」ではなく「法の不備」
(1)2015年の安全保障法制
「情報収集と警戒・監視」についての法整備、すなわち自衛隊法に組み入れられず
(2) 自衛隊法に基づく自衛隊
日本は法治国家であり、自衛隊は自衛隊法に基づいて行動(侵略に対処する「防衛出動」、東日本大震災などに対応する「災害派遣」)
⇒ 国民が法律に基づいて自衛隊の行動を監督するシビリアンコントロールが働いている
(3) 「警戒・監視」は自衛隊法に定められず
すべての行動の基礎となる情報収集を含む「警戒・監視」は、自衛隊法に定められていない
(4)防衛省設置法第4条を適用
海上自衛隊は、侵略事態のほか領海侵犯などの事態に対処すべく、我が国の領海とその周辺の海域を24時間365日、警戒監視 & 防衛に必要な情報を継続的に収集(特に宗谷、対馬、宮古といった重要な海峡は厳重に監視)
(5)例外は自衛隊法84条
「領空侵犯に対する措置」(いわゆるスクランブル)だけ
⇒ 本来なら「警戒・監視」を自衛隊の平戦時を通じて行う常態の任務として自衛隊法に規定すべき
⇒ さらに言えば、普段からの常態としての「警戒・監視」の対象として、ペルシャ湾などもカバーできるようにすべき
(中国の太平洋進出を監視する宮古海峡も、エネルギー輸送の大動脈の起点となるペルシャ湾も、日本にとっての重要性は同じ)
<感想>
元海将・香田自衛艦隊司令官は、「防衛省設置法第4条を乱用している」のが問題ではなく、「警戒・監視」を自衛隊法に定めていないことが問題だと言う。
野党を含めた国会での真摯な議論を経た、早期の自衛隊法改正を期待している。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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