元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、村上春樹のたった二つのコツ?

【 みみずくは黄昏に飛びたつ 】

 

 以下は、「川上未映子 訊く/村上春樹 語る みみずくは黄昏に飛びたつ」より。

 

村上 それはそうと、僕が文章を書くときの基本方針はほとんど二つしかない、って話はしましたっけ?


川上 いえ、聞かせてください。


村上 あのね、僕にとって文章をどう書けばいいのかという規範は基本的に二個しかないんです。ひとつはゴーリキーの『どん底』の中で、乞食だか巡礼だかが話してるんだけと、「おまえ、俺の話、ちゃんと聞いてんのか」って一人が言うと、もう一人が「俺はつんぼじゃねえや」と答える。乞食とかつんぼとかって、たぶん今使っちゃいけない言葉なんだけど、昔は良かった。僕はこれを学生の頃読んだんだけど、普通の会話だったら、「おまえ、俺の話聞こえてんのか」「聞こえてら」で済む会話ですよね。でもそれじゃドラマにならないわけ。「つんぼじゃねえや」と返すから、そのやりとりに動きが生まれる。単純だけど、すごく大事な基本です。でもこれができていない作家が世間にはたくさんいる。僕はいつもそのことを意識しています。


川上 (笑)。


村上 もう一つは比喩のこと。チャンドラーの比喩で、「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」というのがある。これは何度も言っていることだけど、もし「私にとって眠れない夜は稀である」だと、読者はとくに何も感じないですよね。普通にすっと読み飛ばしてしまう。でも、「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」というと、「へぇ!」って思うじゃないですか。「そういえば太った郵便配達って見かけたことないよな」みたいに。それが生きた文章なんです。そこに反応が生まれる。動きが生まれる。「つんぼじゃねえや」と「太った郵便配達人」、この二つが僕の文章の書き方のモデルになっている。そのコツさえつかんでいれば、けっこういい文章が書けます。たぶん。

 


<感想>
 村上春樹の文章を書くたった二つのコツとは、動きが生まれる会話と比喩だという。
 今後、この二つを意識して、文章を書いてみたい。


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