元証券マンが「あれっ」と思ったこと

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あれっ、親会社破綻に伴うTOBを通じた株式移動?

 

ティアック:親会社の破綻に伴うTOBを通じた株式移動 】


 2020/5/22、ティアック(6803)が、「Global Acoustic Partners LLC による当社普通株式に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」を発表した。
https://www.teac.co.jp/downloads/corporate/pdf/20130329_1.pdf

 以下は、その概要。


1.親会社であるGibson Holdings, Inc.(「ギブソン社」)が、流動性資金の確保を目的として当社普通株式の売却を検討

 

2.公開買付者が、売却を打診し、ギブソン社所有の15,744,700株(所有割合54.65%)を取得する純投資を目的として、本公開買付け(TOB)を開始することを決定

 

3.公開買付者及び EVO FUNDは、TOBを通じた当社普通株式の取得に際して、2020年5月22日付で、当社との間で、公開買付者が TOB後に当社普通株式を継続保有せず、取得した当社普通株式を2年以内に東証の競売買市場において売却するよう最大限努力を尽くすこと等を内容とする Agreement on Shareholder’s Rights and Covenants(「当社・株主間契約」)を締結


2012年
ギブソンブランズ社(ギブソン社株式保有)は、2012年に当社の前親会社であったフェニックス・キャピタル株式会社から当社普通株式の譲渡の提案を受け、ギブソンブランズ社の楽器製品の製造販売事業と当社の音響機 器事業との間において販売、製品開発、サプライチェーンの統合等における連携を行うことにより両者の企業価値を最大化させることを目的とした業務提携を行うこととした。

 

2013年5月
また、当社がギブソンブランズ社の連結子会社となることにより、当社とギブソンブランズ社との間において資本提携関係を構築することが望ましいとの認識が一致したことで、ギブソン社が当社普通株式に対するTOBを実施し、フェニックス・キャピタル株式会社を業務執行組合員とするファンドから合計15,744,700株の当社普通株式を取得し、2013年5月より当社の親会社となった。

 

2018年5月
2013年5月に当社の親会社となったギブソンブランズ社度重なる企業買収等に端を発する過剰債務により、米連邦破産法11条の適用を米裁判所に申請。

 

2018年11月
ギブソンブランズ社は、その後2018年11月1日より、投資ファンドコールバーグ・クラビス・ロバーツ(「KKR」)を主要株主として迎え、ジェームズ・カーレイ(James Curleigh)氏を新社長兼最高経営責任者とする刷新された経営陣の下、楽器事業及び業務用音響機器事業に集中し、事業の再成長を目指して行くことになったが、再成長に向けてコンシューマー向け音響機器などの不採算事業から撤退し、ギターを含めた楽器事業に専念する方針を明確にした。

KKRを主要株主とするギブソンブランズ社及びギブソン社の新経営体制の下では、当社事業が非中核として位置付けられることが明らかとなり、今後のギブソンブランズ社及びギブソン社との事業拡大は想定できない状況となってきた。

 

2019年2月中旬
ギブソンブランズ社は、当社に対し、経営資源を中核事業に集中するため、ギブソン社の所有する当社普通株式の全部の売却の意向を通知。

 

2019年4月上旬
当社は、ギブソンブランズ社と協議した結果、当社の企業価値及び株式価値最大化を図る観点から最適な譲渡先を選定する目的で、2019年4月上旬頃にリンカーン・インターナショナル(「リンカーン」) を財務アドバイザーに起用。

 

2019年6月〜2020年1月
その後、リンカーンは、当社普通株式の譲渡先選定プロセスとして、2019年6月中旬に事業会社やファンドを対象として合計約50社に打診をし、その後、5社に選定した上で、2019年8月上旬から当該5社との交渉を開始。
EVO FUNDは、当初は、リンカーンから当社普通株式の譲渡の打診を受けた約50社の候補先の内の1社の資金提供者として選定プロセスに関与していたが、
候補先が5社に絞られた段階で当該候補者が選定プロセスの対象外となったことを受け、EVO FUNDは、
自身による当社普通株式の取得が魅力的な投資機会か否かを判断するため、自らも譲渡先の候補者の1社となるべく、2020年1月中旬に当社普通株式の取得に向けた初期的な意向をKKRに伝えた。
その後、当社の財務アドバイザーであるリンカーンと、EVO FUNDとの間で当社普通株式の取得に向けた初期的な話し合いが行われ、EVO FUNDは、当社普通株式の取得をキャピタル・ゲインが期待できる魅力的な投資機会であると判断し、同年1月30日に、自らも譲渡先の候補者の1社となるべく、リンカーンに対し、当社普通株式を1株当たり105円 (同日終値は198円)で取得するとの意向を表明した。

 

2020年2月
その後、2月下旬頃に、KKR、リンカーン及びEVO FUNDとの間で協議が実施された。同時期において、当社の株価(1株当たりの終値)は、同年2月6日の202円から同年3月13日の105円に値下がりした。
なお、当該値下がりについて、当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大による日本経済の先行きの不透明感を原因とする株式市場の低迷によるもの。

 

2020年3月
EVO FUNDは、かかる当社普通株式の株価の下落を受けて、3月上旬に、当社普通株式の1株当たりの公開買付価格を、公開買付期間の初日の前日の終値から35%ディスカウントした価格(但し、110円を超えないもの)とする条件をリンカーンに対して改めて提示した。
もっとも、EVO FUND及びKKRは、同年3月中旬頃、終値から35%ディスカウントした価格といった計算方法ではなく、1株当たりの公開買付価格を具体的に何円とするかという交渉に焦点を当てることを両社ともに希望したため、計算式に関する協議は終了した(すなわち、下記のとおり、同年4月上旬から、EVO FUND及びKKRは、同年 3月中旬頃の終値(約100円)から約35%ディスカウントした価格である65円からさらにディスカウントした60円を公開買付価格とする案に合意できるか否かという交渉に焦点を当てることとしたため、計算式に関する協議は終了)。

一方、EVO FUNDは、当社の賛同を得た上でTOBを実施したいと考えていたとのことから、 当社代表取締役である英裕治氏及び同取締役である野村佳秀氏とも同年3月下旬に電話会議を実施した。当該電話会議において、EVO FUNDとしては、株式取得後も当社への経営には関与する予定はなく、当社の経営の独立性を尊重するという点について当社代表取締役である英裕治氏及び同取締役である野村佳秀氏との間で方向性の一致を確認し、TOBについて当社の賛同を得られる見込みがあるとの感触を得た。

 

2020年4月〜5月
その後も、4月上旬から同月中旬にかけて、EVO FUNDとギブソンブランズ社及びKKRとの間でTOBについて協議・交渉が進められた。
当該協議・交渉に際しては、(昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大による当社の事業への影響の程度は必ずしも明らかでなかったものの)新型コロナウイルス感染症の拡大による日本経済の先行きの不透明感を受けた当社普通株式の市場株価の値動き、当社普通株式の市場株価のボラティリティの上昇、当社普通株式の市場における取引の出来高の変動による株式の流動性についての懸念(注)等を踏まえた今後の当社普通株式の市場株価の見通しの不透明さを背景として、EVO FUNDが公開買付価格について、当社普通株式1株当たり60円とする案を正式に提案したことを受けて、ギブソンブランズ社及びKKRにて当該提案を応諾できるか否かについて検討がなされた。

当該検討の後、非中核資産である当社普通株式を早期に売却し、経営資源を中核事業に集中したいとのギブソンブランズ社及びKKRの意向もあり、4月14日、EVO FUNDとギブソンブランズ社 及びKKRとは、最終的には公開買付価格を当社普通株式1株当たり60円(同日終値は151円)とすることについて口頭で合意し、TOBのその他の条件について交渉を行った。
一方、EVO FUNDは、2020年3月上旬から、リンカーンを介して当社との間でもTOB後の当社普通株式保有方針等について協議を進めた結果、公開買付者が本公開買付け後に本応募合意株式を継続保有せず、取得した本応募合意株式の全てを2年以内に東証の競売買市場において売却するよう最大限努力を尽くすことについて同年5月上旬に口頭で合意 をし、同年5月上旬以降は、その他の条件(例えば、公開買付者からEVO FUNDに対する本応募合意株式の全部又は一部の譲渡に関する条件)について交渉を進め、当社・株主間契約の締結に向けた準備をしてきた。そこで、2020年5月22日、EVO FUNDは、公開買付者及びギブソン社との間で本応募契約を、公開買付者及び当社との間で当社・株主間契約をそれぞれ締結し、 本応募契約に定めるTOBに係る前提条件が充足された場合又は公開買付者により放棄された場合に、TOBを実施することを決定し、併せて、本公開買付価格を60円(同日の当社 普通株式終値は147円)と決定した。

(注)例えば、2020年3月1日から4月10日の間の当社普通株式東証における出来高は20,900株から226,000株の範囲内で推移しており、10倍以上の差がある。


<感想>
 本件は、親会社の破綻を契機としたTOBに伴う株式移動。
 公開買付者は、取得後2年以内に市場売却するよう最大限努力を尽くすという。
 株式会社の所有と経営の分離を絵に描いたような事例であるように思われる。

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