【 岸惠子の粋な生きざま 】
先日、岸惠子著の「孤独という道づれ」(幻冬舎)を読んだ。
以下は、一部抜粋。
プロローグ
若い季節や、女盛りの中年期でもなく、今まさに「晩年」と人の呼ぶ季節の生き方を「孤独という道づれ」にくるまって書いてみようか・・・・・・。物語を書くことは小さい頃からの夢だったから。
落ちてきた青い封筒
んっ!?「後期高齢者医療被保険証」。
わたしは我武者羅に生きてきた。大事なものまで、目をつむって見切り発車をして、未練もなく捨ててきた。それらが今、私を捨てようとしているのだった。
青い封筒の中身、不愉快な十一個の文字がわたしに齎(もたら)した想念の中に私は沈み込む。
煌めく陽光のなかで、わたしの作ってきた風景たちが、滲んで揺れてわたしを見捨ててゆく。つまり、記憶が消えてゆくのだ。そんな心もとないイメージが広がる。
エピローグ
「皺はわたしにもいっぱいあるのよ。それを目立たせない力がわたしにはあるかもしれない」
「受けた傷や、躓(つまず)きを自分で治すのよ。へこたれないのよ。誰かに頼ったりしないのよ。そんな生活をしているわたしは年を取っている暇なんかないのよ」
「わたしには闘わなければならないことが、山ほどあったし、今もあるの。世間が作った常識とか、もっと大事な法律の決めごとを知らないので、いつも負けるのよ。負けて勝ちを取るなんて才能は持ち合わせていないから、しょうがない・・・・・・」
そして最後に、優れた医師でもあったかつての我が夫、イヴ・シャンピが言った言葉を書き留めたい。
見たことのない人にそのものを見せることはできない。
見てしまった人は、見る前に戻ることはできない
わたしは「見てしまった人」なのだ。何を見たかを、これから書いていくつもりでいる。わたしにまだ生きていくことが許される限り・・・・・・。
<感想>
24歳で結婚のため渡仏し、四十数年のパリ暮らしの後、現在はベースを日本に移した岸惠子。
へこたれずに誰かに頼ったりせず我武者羅に生きて、80歳過ぎてもなお意欲旺盛。粋な生きざまが気持ち良い。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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