元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、片倉工業のTOBに応募しないという選択?


片倉工業MBOTOB価格を上回る株価で売却できる場合の株主の選択肢 】

 


 片倉工業の株式を公開買付け中の「かたくら」は、オアシス(所有割合10.57%)を含む大株主5名(同31.6%)との間で、TOBに応募する旨の契約をそれぞれ締結していたが、2021/12/20、オアシスはTOB価格(@2,150)を上回る@2,350(+9.3%)で鹿児島東インド会社宛て、保有全株式を売却した。

 

 これを受けて、かたくらはTOB期間を2022/1/11まで延長したが、株価はTOB価格を上回って推移している(1/7終値@2,290)。

 

 本TOBにおける、アオシス以外の大株主4名の選択肢等を考えてみたい。

 


1.鹿児島東インド会社(KE社)のスタンス
(1) 2022/1/5「片倉工業株式会社に対する公開買付けに対する意見の表明」(一部抜粋)
 https://prtimes.jp/main/html/rd/amp/p/000000005.000092281.html

 まず、 片倉工業保有する不動産の時価を考慮した場合、 本公開買付価格は著しく低廉であり、 少数株主の利益に反するものです。


 すなわち、片倉工業が2021年3月30日付で提出した第112期有価証券報告書において、賃貸等不動産の期末時価は127,791百万円とされております。これに対し、片倉工業の2021年9月30日時点の発行済株式総数(35,215,000株)から同日時点の自己株式数(1,907,422株)を控除した数である33,307,578株に、本公開買付価格である2,150円を乗じた額は、わずか71,611百万円となります。

 

 本公開買付けの公表以降、片倉工業の市場株価は本公開買付価格を上回って推移しており、これは、多くの少数株主が本公開買付価格が非常に低廉であると認識していることの証左であると考えております。

 

 また、当社は、必要に応じ、当社と同様の意向を有する株主様を募ることも検討するとともに、片倉工業の株式を追加で取得することも検討しております。

 

(2) 上記のまとめ
 KE社は、「TOB価格は著しく低廉であり、少数株主の利益に反する」と考えており、必要に応じて、片倉工業の株式を追加で取得することも検討している。

 


2.大株主4名の選択肢
(1) かたくらとのTOB応募契約に基づいてTOBに応募する
 ⇒ 大株主4名の株主から、KE社宛て(or 市場で)高値で売却しなかったことに対する訴訟リスクあり


(2) TOBに応募せず、TOB価格より高値でKE社へ(or 市場で)株式を売却する
 ⇒ かたくらから、契約不履行の訴訟リスクあり

 

(3) 結論
 上記のリスクを比較衡量の上、いずれかを選択することになる((1)の可能性が高いと思料)

 


3.片倉工業の株価終値推移(円)
 2021/12/28 2,550、2022/1/4 2,458、1/7 2,290

 


4.オアシスの大量保有変更報告書の内容
(1) 概要
 2021/12/20に、KE社へ保有全株式を売却。価格は@2,350(TOB価格@2,150を9.3%上回る)

 

(2) 当該株券等に関する担保契約等重要な契約(一部抜粋)

 提出者は、かたくらとの間で、提出者が運営するファンドが所有する普通株式の全てについて、かたくらが2021年11月8日に開始した本公開買付けに応募する旨の公開買付応募契約(「本応募契約」)を同日付で締結した。

 

 本応募契約においては、非公開化又は提出者がこれまで発行者に対して積極的に行ってきた提案と一致する内容の経営計画を持ち、発行者が将来にわたって持続的な成長を遂げることに有益な貢献を果たすと提出者が判断する第三者が、本公開買付価格(又は本公開買付けの開始日以降にかたくらが本公開買付価格をそれより高い価格に上方修正した場合はその価格)より大幅に高い価格で買い付ける提案を行う場合であって、本公開買付けに対して応募することが投資家に対して提出者が負っている受託者責任に反すると提出者が判断する場合には、提出者は応募義務に拘束されないとの合意(「本合意」)がされていた。

 

 提出者は、2021年12月15日にKE社から提出者が運営するファンドが所有する普通株式の全てを本公開買付けにおける買付価格に10%程度上乗せした価格で買い付けたい旨の申し入れを受けた。提出者は、KE社への株式売却は本合意に従って行うものであり、本応募契約に違反することはないと考え、2021年12月20日にKE社に対して3,519,931株を売却した。

 


<感想>
 大株主4名の動向を含めたTOBの帰趨を確認してゆきたい。

 

----------------------------------------------------------------------
元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuru1.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------