元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、袴田事件は警察官がねつ造?


袴田事件最高裁への特別抗告を断念 】

 


 袴田事件のこれまでの経緯と再審決定の内容について、触れてみたい。

 


< これまでの経緯 >
https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/deathpenalty/q12/enzaihakamada.html

 

1980/11/19:最高裁が上告棄却し、袴田氏の死刑が確定

 

1981/4/20:第1次再審請求を申し立て

 

2008/3/24:最高裁が特別抗告を棄却

 

2008/4/25:第2次再審請求を静岡地裁に申立て。弁護団は、5点の衣類の味噌漬け実験の結果を新たな証拠の一つとして裁判所に提出し、定期的に三者協議を行ってきた

 

2010/9:検察は、本事件において初めて任意に証拠を開示し、弁護団は、その精査を行った上、新たな証拠開示請求及び主張

 

2014/3/27:静岡地裁は、袴田氏の第2次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する旨決定をし、同日、袴田氏は釈放
⇒ 検察官が即時抗告

 

2018/6/11:東京高裁は、再審開始決定のみを取消し、弁護側が特別抗告

 

2020/12/22:最高裁は、高裁決定を取消して差戻し

 

2023/3/13:東京高裁は、2014年の静岡地裁の再審開始決定を支持し、検察官の即時抗告を棄却する決定

 

2023/3/20:東京高検が最高裁への特別抗告(不服申し立て)を断念

 


< 2014/3/27の静岡地裁:再審開始決定の具体的内容 >
https://hakamada-jiken.com/process/retrial_2014/

 


1.これまでの裁判所の判断を越えた判断
・拘置の執行を取り消したという結論:従来の裁判所の枠を越えたもの

 

・決定の理由の論述:これまでの裁判所の判断方法とは違っている「常識的でわかりやすい」論理ということ

 


2.常識的で簡明な論理
(1) 重要な事実や証拠について、常識的で簡明な骨太の論理によって判断している

 

(2) DNA鑑定については、非常に簡潔にわかりやすく整理し、適切に評価。まったくDNAが抽出されていないという本田鑑定の有効性を説明

 

(3) 味噌漬け実験についての評価も、予想以上であった。5点の衣類の生地や血痕の色が、実験の結果と異なっていることを指摘した上で、実験の限界をふまえながら、なお、その意義を十分に評価

 


3.全ての事実・証拠を合理的に説明できるか

(1) 今回の決定は、事実や証拠すべてを総合的にかつ合理的に説明することができるかという姿勢で貫かれていることも特徴

 

(2) 常に、事実や証拠の全体を合理的に説明できるかを検討しながら論理を展開

 


4.さまざまな可能性の検討

(1) 事実や証拠を評価する際に、さまざまな可能性を考えること

 

(2) 従業員として働いていた者の行動として、燃やしてしまう方が自然であり、捜索や仕込みの際などに発見されなかったのは、袴田さんが入れたものではないことを窺わせるとした

 


5.調書を無条件に許容しなかったこと

(1) 調書について、「結局は取調官の思うところに従って供述したことになるのであるから、このような重要な部分で客観的な事実との食い違いが明らかになった以上、他の部分についても、同様の危険が存在するはずである」とした

 

(2) 「警察官から端布が袴田の実家にあった同居者の全ての衣類と一致しないという事実を突きつけられた結果・・・に過ぎないとみる余地がある」として、取調べの実態をふまえて、現実的な可能性を考えた上での判断

 


6.警察官による証拠のねつ造の可能性

(1) 5点の衣類について、警察官による証拠のねつ造の可能性を認めたこと

 

(2) 警察官が証拠をねつ造し、その結果48年間も袴田さんを拘束してきたことに、裁判官が、「耐え難いほどの不正義」と感じて、死刑執行停止だけでなく、拘置の執行停止まで認め、袴田さんの釈放させたことにつながったもの

 


7.結語-裁判員裁判の影響か

・常識的でわかりやすい判断、調書を重視しない姿勢等は、裁判員裁判の特徴

 

裁判員裁判の導入に伴う公判前整理手続における証拠開示の制度が、今回の証拠開示に結びついていることは明らか

 

弁護団も、最終意見書の陳述は、パワーポイントを用いたプレゼンテーションを行った

 

・今回の決定を担当した裁判官たちも、相当数の裁判員裁判を経験し、一般の人たちと議論することによって、孤立した考え方や判断方法などが、知らず知らずのうちに修正されることになったのかもしれない

 

・また、弁護人も、制度によって、少しは成長したと言えるのかもしれない

 


< 再審請求と再審公判 >
https://www.t-defender.jp/saishin20200205/


○刑訴法435条6号
 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。


再審請求審:再審請求は慎重な審理の上でなされることが多い(袴田さんの場合は、死刑判決確定がから52年)


再審公判:再審開始決定が確定すると、はじめて再審公判が開始され、公開の法廷による審理となる。
ただし、再審開始決定が確定すると、検察官は事実上有罪の主張を放棄することもめずらしくない(簡単な儀式で終わり無罪が決まる)

 


<感想>
 警察官がねつ造した可能性があるのだとすれば、ねつ造した警察官の罪を問うことができるように、控訴時効の改正を検討する必要があるように思われる。

 

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