元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、具体的数値の還元策が望ましい?


積水化学工業:株主還元策 】

 


 2022/7/28、日経新聞に、「積水化学、4~6月純利益16%増 半導体製造向け材料好調」記事が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC241K00U2A720C2000000/

 

 以下は一部抜粋。

 


 積水化学工業が28日発表した2022年4~6月期の連結決算は、純利益が前年同期比16%増の145億円だった。半導体の製造工程で用いるテープなど樹脂材料が好調で、円安による為替差益もふくらんだ。

 

 23年3月期の連結純利益は前期比89%増の700億円の見通しだ。想定を上回る円安や原燃料高騰に伴う値上げ浸透を受けて従来予想を35億円上方修正した。

 


積極的かつ安定的な株主還元を維持
https://www.sekisui.co.jp/ir/investor/dividend/


当社は、企業価値を増大させ、株主の皆様への利益還元を積極的に行うことを経営上の重要課題の一つとして位置付けています。

 

株主還元につきましては、連結配当性向35%以上、DOE(自己資本配当率)3%以上、またD/Eレシオ0.5以下の場合には総還元性向50%以上を確保し、業績に応じて、かつ安定的な配当政策を実施していきます。

 


予想配当 53円/株 a
予想純利益 161円/株 b(h÷g)
予想配当性向 33% c=a÷b

 

自己株式取得 16,000百万円 d

 

発行済株式数 464百万株 e
自己株式数 27百万株 f
 除自己株式数 436百万株 g=e-f

 

予想純利益 70,000百万円 h
総還元性向 56% i=(a×g+d)÷h

 

株主資本 601,337百万円 j
DOE(株主資本配当率) 4% k=a×g÷j

 

ROE 12% l=h÷j

 


<感想>
 本件は、連結配当性向35%以上、DOE(自己資本配当率)3%以上、または総還元性向50%以上(D/Eレシオ0.5以下の場合)の株主還元策。
 株主にとっては、具体的な数値の提示が望ましいように思われる。

 

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あれっ、商船三井が一転して増配予想?


商船三井:配当性向等 】

 


 2022/7/30、日経新聞に、『商船三井、今期500円に増配 4~6月純利益2.7倍で最高 コンテナ運賃「10月まで堅調」』が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63048110Z20C22A7DTB000/

 以下は、一部抜粋。

 


 商船三井は29日、2023年3月期の年間配当を500円に増やすと発表した。従来予想は350円だった。4月の株式分割を考慮すると、減配予想から一転して増配となる。

 


配当方針
https://www.mol.co.jp/ir/stock/dividend/index.html

 

内部留保による資金を活用し、企業体質の強化を図りつつ1株あたりの企業価値向上に努めます。

 

・株主還元については、22年度は配当性向25%を予定し、23年度以降については当社投資計画の進展を確認しながら、東証プライム市場の動向を踏まえた見直しを検討します。

 

・当社は、積極的な事業投資による企業価値向上及び配当を通じた株主への直接的な利益還元を経営上の重要政策と認識しております。


予想配当 500円/株 a
予想純利益 1,939円/株 b
 予想配当性向 26% c=a÷b

 

予想純利益 700,000百万円 d
株主資本 1,233,039百万円 e
 ROE 57% f=d÷e

 

発行済株式数(除自己株式数) 361百万株 g
 DOE 15% h=a×g÷e

 


<感想>
 本件は、コンテナ運賃が好調な商船三井の減配予想から一転して増配予想になったもの。
 配当性向を意識した株主還元方針に沿った増配であると思われる。

 

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あれっ、バランスシートKPI?


アドバンテスト:総還元性向、配当性向等 】

 


 2022/7/29、日経新聞に、「アドテスト上振れ、49%増益今期最終、自社株買い500億円」が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62998110Y2A720C2DTC000/

 以下は一部抜粋。

 


アドバンテストは28日、2023年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比49%増の1300億円になりそうだと発表した。円安が収益を押し上げ、最高益更新の従来予想をさらに175億円上方修正した。先端半導体の量産化などで試験装置の引き合いはに、「好調が続くとみている。発行済み株式数の5.3%に相当する上限500億円の自社株買いなどで株主還元を増やす。

 

22年4~6月期の連結純利益は前年同期比89%増の364億円だった。売上高は40%増の1359億円、営業利益は71%増の447億円で、いずれも四半期として過去最高を更新した。これまで未定としていた4~9月期の配当(中間配当)は1株当たり65円と前年同期に比べて15円増やす。

 


【総還元性向(仮)】57.5%

((a×b+c)÷d)
a:発行済株式数(除自己株式) 190,169千株
b:配当金 130円(仮)
c:自己株式取得 50,000百万円
d:当期純利益 130,000百万円

 


【配当性向(仮)】19.1%

(65円×2÷680円、EPS(仮):680.0円(130,000百万円÷(199,542-9,373)千株))

 


株主資本比率(仮)】61.7%
(327,879÷531,098(百万円、22/6ベース))

 


ROE(仮)】39.6%
(130,000÷327,879(百万円、22/6ベース))

 


株主還元、バランスシートKPI、今期の株主還元について(出所:https://www.advantest.com/ja/investors/pdf/J_BIZ_220728_note.pdf、P25~P27)

 


株主還元

自己株式取得を含めた通期総還元性向も引き続き、50%以上を目処とする

 


バランスシートKPI
 財務健全性:株主資本比率50%以上
 資本効率:ROE30-35%(前回公表値:20%以上)
 ROICベースの事業・投資管理

 


今期の株主還元について
 予想配当:中間配当65円
 自己株式取得の総額:500億円
 自己株式消却:800万株(発行済の4.0%)

 


<感想>
 本件は、アドバンテストの株主還元やバランスシートKPIについて。
 株主宛てへの約束が分かり易く纏まっているように思われる。

 

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あれっ、信越化学は株主を意識した取組を継続?


信越化学工業:配当性向、総還元性向、ROIC 】

 


 2022/7/28、日経電子版に、「信越化、今期純利益18%増 2期連続最高 住宅用塩ビ好調」記事が掲載された。
https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGKKZO62957400X20C22A7DTA000&scode=4063

 

 以下は、一部抜粋。

 


売上高は23%増の2兆5500億円、営業利益は22%増の8250億円を見込む。年間配当は前期比50円増の450円と、8期連続で増配する。さらに1000億円を上限とする自社株買いで発行済み株式数の2.2%に相当する900万株を取得し、全株を消却する。

 


業績予想および配当予想に関するお知らせ
https://www.shinetsu.co.jp/wp-content/uploads/2022/07/20220727J1.pdf

 


【配当性向】

 31.41%(450円÷1,432.59円)

 


【総還元性向】

 48.36%((a×b+c)÷d)

a:発行済株式数(除自己株式) 409,736千株
b:配当金 450円
c:自己株式取得 100,000百万円
d:当期純利益 588,000百万円

 


斉藤社長メッセージ(一部抜粋)
https://www.shinetsu.co.jp/jp/ir/policy


当社は2022年3月期(2021年度)に過去最高の業績を達成しました。

ROICは再び20%を回復し、ROEも目安とされる水準を上回りました。この実績を踏まえ、当社は年間配当金を一株当たり400円としました。これは当社の歴史の中で最も高い配当金であり、過去6年間の増加率は年平均で24%です。

増配に加えて1,000億円規模の自己株式の取得も発表しました。この二つを合わせた株主の皆さまへの総還元は約2,660億円です。これは当社の業績と強固な財務基盤にまさに裏打ちされたものです。

 


【ROIC】信越化学バージョン)
https://www.shinetsu.co.jp/jp/ir/highlight/

 25.35%((a×(1-b)÷(c+d-e)

 a:営業利益 825,000百万円
 b:実効税率 34.21%
 c:株主資本 3,206,210百万円
 d:有利子負債 30,996百万円
 e:手元資金 1,096,908百万円

 


<感想>
 上記は、信越化学工業の各種指標。
 配当性向は30%超、総還元性向は50%近くと、株主を意識した姿勢が好感できる。

 

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あれっ、株主還元は株主資本配当率3%?

 

【 配当性向、総還元性向 】

 


 2022年7月27日、日経新聞キヤノンオムロンの6月時点の決算内容が掲載された。

 以下は一部抜粋と配当性向等の数値について。

 


キヤノン、今期純利益22%増 上方修正、半導体装置など好調 年間配当20円上積み
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO62924950W2A720C2DTA000/

 

御手洗会長は成長を追い風に「配当回復に向けて踏み出した」と強調する。前期に続き配当予想の上方修正を決めた。年間配当を120円(前期は100円)と20円引き上げる。20年12月期にコロナ影響で80円に半減していたが、業績の好転を受けて過去最高水準となる160円にまで早期に戻したい考えを示す。


< 配当性向 >
47.46%(120円÷252.86円)


< 株主還元についての考え方は? >
https://global.canon/ja/ir/individual/detail/08.html
「共生」の理念のもと、永続的な企業価値向上を目指し、株主の皆さまに貢献していきます。直接的な株主還元としては配当を中心に考えています。

 


オムロン、純利益60%減 4~6月、上海工場停止で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF261HG0W2A720C2000000/ 

 

オムロンは26日、200億円を上限とする自社株買いの実施も発表した。取得する株式は最大330万株で、自己株式を除く発行済み株式の1.7%に当たる。取得期間は7月27日~23年3月31日まで。23年3月期の年間配当予想は98円で据え置いた。


< 配当性向 >
30.99%(98円÷316.28円)


< 総還元性向 >
62.81%((a×b+c)÷d)
a:発行済株式数(除自己株式) 199,701千株
b:配当金 98円
c:自己株式取得 20,000百万円
d:当期純利益 63,000百万円


< 株主還元方針 >
https://www.omron.com/jp/ja/ir/irlib/pdfs/20220309_presentation_script_j.pdf、P57

1.「株主資本配当率(DOE)3%程度」を基準とする

2.長期にわたり留保された余剰資金については、機動的に自己株式の買入れなどを実施

 2021/3期:3.0%
 2022/3時:2.9%

 


<感想>
 上記は、キヤノンオムロンの株主還元方針。
 会社の置かれたステージにより、各社各様の方針が設定されているものと思われる。

 

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あれっ、制度ロックアップ違反による株式の売却?

 

【 制度ロックアップと任意ロックアップ 】

 


 2022/7/22、坪田ラボが、「第三者割当により割り当てられた株式の譲渡に関する報告書」の提出に関するお知らせ、を発表した。
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS82482/d5a95e3d/e61a/4015/bed8/5b80a56fcc7e/140120220722503258.pdf

 

 以下は、一部抜粋。

 


1.概要

 上場申請直前事業年度以降に行った第三者割当等により株式の割当てを受けた者は、株式上場日(2022年6月23日)以後6ヶ月を経過する日までの間は、当社株式を第三者に譲渡しない 旨、また当社株式を第三者に譲渡する場合は事前に当社に書面にて通知をする必要がある旨等の確約(いわゆる、制度ロックアップ)がされておりました。

 

 しかしながら、当社株主であった学校法人慶應義塾(以下、慶應義塾といいます。)との打ち合わせの際に、慶應義塾が譲渡制限期間内に下記の通り所有株式の全部を市場で売却していたことが判明致しました。

 

 そのため、当該事項判明後、当社は慶應義塾及びSMBC日興証券株式会社(以下、日興証券といいます。)と事実関係の詳細な確認等を行ないました。この詳細確認ができましたので、 本日付けで、有価証券上場規程及び有価証券上場規程施行規則に基づき、東証に対して「第三者割当により割り当てられた株式の譲渡に関する報告書」を提出致しました。


確認の結果、以下の事項が判明しました。

 

・当社は「継続保有確約書の締結先に対して、制度ロックアップを再周知する様に」という主旨の通知を日本取引所自主規制法人の上場審査部から4月15日に受領したものの、この対応を失念していたこと。

 

・上記もあって、慶應義塾が確約書におけるロックアップ条項の存在を認識ないままになっていたこと。

 

日興証券慶應義塾が所有する当社株式の口座受入れに当たり、当該株式が制度ロックアップの対象であることの確認が不十分であったことから、当該株式に売却規制登録の社内手続きを採ることの確認が漏れていたこと。

 

・このため慶應義塾は売却前に日興証券に対してロックアップの対象であるかについて問い合わせを行ったものの、日興証券は当該規制の対象ではない旨の回答を行っていたこと。

 

・なお慶應義塾は決して制度ロックアップ対象であることを把握したうえでの故意の売却でなく、あくまで制度ロックアップについて認識もれであったこと。

 


< 制度ロックアップ >

有価証券上場規程施行規則(東京証券取引所
https://jpx-gr.info/rule/tosho_regu_201305070041001.html

 

第3款 上場前の第三者割当等による募集株式の割当て等
(第三者割当等による募集株式の割当てに関する規制)

 

第268条
 新規上場申請者が、新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して1年前より後において、第三者割当等による募集株式の割当てを行っている場合には、当該新規上場申請者は、割当てを受けた者との間で、次の各号に掲げる事項について確約を行うものとする。

 

(1)割当てを受けた者は、割当てを受けた株式を、原則として、割当てを受けた日から上場日以後6か月間を経過する日まで所有すること。この場合において、割当株式について株式分割、株式無償割当て、新株予約権無償割当て又は他の種類の株式若しくは新株予約権への転換が行われたときには、当該株式分割、株式無償割当て、新株予約権無償割当て又は他の種類の株式若しくは新株予約権への転換により取得した株式又は新株予約権についても同日まで所有すること。

 


< 任意ロックアップ >

東京証券取引所
新規上場申請者に係る各種説明資料の記載項目について
https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/documents/nlsgeu000005n6e4-att/16_growth.pdf

 

(13) ロックアップ等又は株主間契約の状況
上場申請日(既上場会社においては直前の基準日等)における大株主(上位15名程度)が、申請会社、 申請会社役員又は他の大株主との間で、申請会社の株式の譲渡(ロックアップ、アーンアウト等)又は申請会社の業務運営(取締役候補の選定、株主に対する事前承認等)に関して、協定又は契約を結んでいる若しくは結ぶ見込みである場合には、その内容(締結年月、契約の当事者、契約の概要等) を記載してください。

 


<感想>
 本件は、三者(坪田ラボ:株式上場会社、慶應義塾:投資家、日興:主幹事証券)三様のミスが重なった結果、制度ロックアップの譲渡制限期間内に、所有株式の全部を市場で売却してしまった事例。
 本件を他山の石として、同じようなミスが発生しないよう、努めて参りたい。

 

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あれっ、HISがハウステンボスを売却?

 

【 HIS:ハウステンボスを売却 】

 

 

 2022/7/21、日経電子版に、「HIS、財務悪化で窮余の資金捻出 ハウステンボス売却」記事が掲載された。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC212J60R20C22A7000000/

 

 以下は、全体の概要。

 

 

< HISの社歴>

1980年 海外航空券販売 開始

2010年 ハウステンボス(92年開業、03年破綻) 子会社化

 

2014年 ユーロ円CB発行(200億円)

2016年 電力小売事業に参入

 

2017年 ユーロ円CB発行(100億円)

2021年 第三者割当増資(PAX:総額50億円)     新株予約権発行(PAX・澤田氏宛て。行使率0%。行使時総額は約92億円)     

    子会社で「Go Toトラベル」給付金不正受給発覚

 

2022年 澤田秀雄氏 会長兼社長CEO ⇒ 会長CEOへ     電力小売事業売却

 

1)一時は連結営業利益の半分近くを稼ぐ主力事業のひとつに育った

 

2)コロナ禍以降は訪日外国人(インバウンド)需要の蒸発などにより来場者数が減少 ⇒ 21年10月期のハウステンボスを含むテーマパーク事業は35億円の営業赤字(21年11月~22年4月期には1億円の営業黒字に回復)

 

 

<感想>

 旅行代理店業とハウステンボスは、コロナ禍で旅行需要が減退すれば、同じように、売上・収益が落ち込むというリスクを抱えている。

 リスクヘッジのためには、本業と親和性がありながらも、リスクの方向性が違う事業を並列的に営むことが必要なように思われる。

 

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