元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、ローランドDGの裏に任天堂創業家あり?

 

【 ローランドDGをめぐるTOB:タイヨウに軍配 】

 


 2024/5/15、四季報ONLINEに、「ローランドDGをめぐるTOB合戦、ファンドが語る全内幕 タイヨウのヘイウッドCEOに聞く」が、掲載されていた。
https://shikiho.toyokeizai.net/news/0/754403

 

 以下は、掲載記事からの一部抜粋。

 


1.――ブライアンさんはブラザーの対抗TOBがどのように見えていたのでしょうか。

 

ブラザーがローランドDGに何か悪いことをしようとしているとは全然思っていない。ただ、2つの懸念点があった。

 

1つ目は、過去にこの2社は両社にとってプラスとなる取り組みを検討したものの、私の知っている限りでは大成功とはいえない結果に終わったこと。2つ目は、ディスシナジーをどうすれば解決できるかについて具体的な返事がなかったことだ。

 

ブラザーに買収されれば、主要サプライヤーとの関係が変わってしまい、ローランドDGの事業の継続性自体に疑問符がつく。またローランドDGの労働組合の調査によれば、9割に近い従業員がブラザーによる買収に反対の意思を示した。社員が逃げてしまう頭脳流出が起こる危険性もあった。

 


2.――ブラザーからの買収提案を受けてローランドDGはMBOに踏み切ったということでしょうか。防衛のようなMBOに問題はないのでしょうか。

 

2023年9月にローランドDGの取締役会がブラザーからの買収提案を受け取った際、私はこれを真剣に検討するべきだと助言した。確かにそれまでのブラザーとの協業は失敗だったが、ブラザーの提案が真摯な提案である以上、絶対に棚ざらしにしてはいけない。

 

また、取締役会は真摯に株主利益を追求するために、ブラザーからの買収提案だけではなく、ほかの提案も比較検討すべきだと思った。

 

私は早い段階で検討メンバーから外れたが、取締役会はすぐに真摯な検討を始め、ローランドDGとその株主にとって何がベストかを複数の選択肢から議論したと理解している。その結果、われわれのMBO提案が企業価値と株主共同の利益の両方に優れていると取締役会は判断したのだと考えている。

 

ディスシナジーの詳細などかなりの開示が今回なされたことは、日本の資本市場にとってプラスであり、経産省指針の成果だと思う。

 


3.――経産省の指針は日本企業にさらなる影響を与えると思いますか。

 

日本の資本市場がより効率的なものになるきっかけになると思う。そうでないと日本の競争力が失われると心配している。

 

今の日本はアメリカの1980年代の状況に近い。アメリカの市場の歴史を振り返れば、1960年代に多くの合併買収があり、コングロマリットのような巨大企業が出現した。しかし、それらの企業は次第に経営が非効率となった。その状態を変えるため、1980年代に敵対的買収をやり始めた。

 

この時代には「敵対的買収がたくさんあった」というイメージがあるが、実はそうでもない。マーケットが活発化していく中で自発的な合併買収が増えた。日本も最初は敵対的な買収からだろうが、その後のフェーズではいろんな会社が自発的に合併買収を積極化していくのではないか。

 


< YFOが資金面でサポート >

4.――タイヨウも任天堂創業家の資産運用会社であるヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)に買収されました。

 

YFOは過去にはアメリカのビッグテック企業に投資していたが、2019年ごろから日本市場に参加する方法を探していた。「敵対的な提案はせず、日本の企業をサポートしたい」というビジョンがタイヨウと一致していた。タイヨウの手法を学びたいということで買収に至った。

 

ローランドDGの件もYFOがいなかったらやりにくかったと思う。MBOを行うとなると短期で資金を集めないといけないが、YFOと一緒だったので助かった。

 

日本は海外からは入りづらいマーケットですよ。文化や言葉、会議中に居眠りしているおじさんをどう理解すればいいのかとか(笑)。われわれは日本のことを深く理解しているコンビ。今後はYFOと協力した案件が増えるだろう。

 


ご参考1)2022/2/7「任天堂創業家、対話型ファンドの米タイヨウを買収」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB052CP0V00C22A2000000/

 

ご参考2)2024/5/11『ブラザー「3度目の変身」戦略練り直し ローランドDG買収断念』
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80594230Q4A510C2TB0000/

 

ご参考3)2024/5/16 ローランドDG「XYZ株式会社による当社株式に対する公開買付けの結果並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」
https://ir.rolanddg.com/ja/ir/news/auto_20240515597279/pdfFile.pdf

 

ご参考4)2023/8/31 経産省「企業買収における行動指針」
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831003/20230831003.html

 


<感想>
ローランドDGのTOBは、同意なきブラザー工業TOBではなく、同意ありの任天堂創業家・資産運用会社YFO傘下のタイヨーのMBOで決着した。記事にもあるように、今後、様々な形態の自発的なM&A案件が増えてゆくものと思われる。

 

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