元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、経産省のM&A指針が与えた影響?

 

経産省M&A指針の影響 】

 


 2024/5/20、日経電子版に『「同意なき買収」どう生かす コロワイド社長などに聞く』が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD3047W0Q4A430C2000000/

 

 以下は一部抜粋。(その1)

 


実現すべきM&Aに弾み コロワイド社長 野尻公平氏

 

87年に岡三証券入社、93年コロワイドに転じ、2012年から現職。M&Aを駆使し、コロワイドの事業規模を拡大させてきた

 


経産省の指針には絶大な威力がある。長らく「敵対的買収」と表現されてきたものが「同意なき買収」と呼び名が変わり、「対象会社の取締役会の賛同を得ずに行う買収」と明確に定義されたからだ。

 


指針が株主利益、企業価値の最大化を掲げたおかげで、曖昧な理由での反対、曖昧な目的による買収提案はできなくなった。2020年に大戸屋ホールディングス(HD)を(同意なきまま)買収した際は企業価値向上に向けた真摯な議論を試みたが、先方の経営陣が「経営の独自性」だけ主張し、困惑した。

 

独自性とはなんですか、と質問しても、それ以上の答えが返ってこない。結局、保身だったのではないか。今なら大戸屋HDの経営陣も指針に沿って動かざるを得ず、感情論ではなく合理的な議論ができたかもしれない。

 

我々は経営陣と敵対しただけで、大戸屋HDという会社と敵対したわけではない。実際、買収後に経営陣を刷新しても退職者はほとんど出なかった。どこまでが影響かわからないが、買収でやめた社員は知る限り5人だけだ。

 

買収後は月次決算すら組んでいなかった大戸屋HDの情報と課題の見える化を進め、改革に取り組んだ。2024年3月期は売上高、経常利益とも過去最高を更新し、株価も買収時を大きく上回る。大戸屋HDの企業価値も株主価値も確実に上がった。

 

指針の効果で、今後は同意なき買収提案は増えるだろう。経営陣との対立を懸念し断念されていたM&Aが表に出てくる。そのこと自体は日本の経済活性化にとっていいことだ。同意なき買収案件に資金を出さなかった金融機関の姿勢も変わったと感じる。

 

とはいえ、正しい手順は踏まなければいけない。まず提案書を相手に渡し、話し合いを複数回試みる。それでも折り合わずTOB(株式公開買い付け)に至ることは仕方ないが、同意なきTOBを突如仕掛けることはあり得ない。

 

同意なき買収を持ちかけられた側も、抵抗するすべがある。MBO(経営陣が参加する買収)やホワイトナイト探し、買収防衛策もある。ただし、あくまで株主が認めてくれれば、だ。

 

買収者ににらまれたら終わりではない。上場企業の場合、株主に決定権がある。我々取締役はあくまで仕事を委託されているだけで、納得できないなら上場しないことだ。

 


ご参考)2023/8/31 経産省「企業買収における行動指針」
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831003/20230831003.html

 


<感想>
コロワイド社長の言うように、経産省M&A指針に基づいて、企業価値最大化の観点から、買収者側・被買収者側の取締役双方とも、より真摯でより合理的な議論ができるようになったように思う。

 

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