元証券マンが「あれっ」と思ったこと

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あれっ、企業経営のギャップに気づくべき?


経産省M&A指針:企業経営のギャップ 】

 


 2024/5/20、日経電子版に「企業価値の向上競え ニュートン・インベストメント・パートナーズ社長兼最高経営責任者(CEO) 大塚博行氏」が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD3047W0Q4A430C2000000/

 

 以下は記事の抜粋+1・2の追記。

 


おおつか・ひろゆき 92年住友銀行(現三井住友銀行)入行。米カーライル日本法人副代表を経て2023年にエンゲージメントファンドのニュートンを立ち上げる

 


1.企業の経営陣がギャップに気づくべき

経産省指針の効果で同意なき買収は増えるかもしれないが、それは結果論に過ぎない。指針を検討した委員の一人として私が主張してきたのは、企業の経営陣がギャップに気づくべきだということだ。

 

自分たちが経営するより高い買収額を提示できる者がなぜ現れたのか、経営陣はそこを常に考えなければいけない。そのギャップの存在を気づかせる意味で、指針の果たす役割は大きい。日本企業はこれまでこうした形でチャレンジされることがなかった。経営者に気づきがなく、危機感も足りなかった。

 

企業の価値を示す時価総額は、足元の利益と、利益がどう伸びるかという将来の期待感からくる倍率、つまりPER(株価収益率)やEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)倍率の掛け合わせだ。成長期待が大きければ倍率は高く、利益が同じ100億円の会社でも将来期待値の差で時価総額は大きく変わる。

 

この倍率が不十分なままだと、もっとうまく経営できると考える買収者とギャップが生じる。同意なき買収提案が来て、そのギャップが白日の下にさらされる。自分たちは頑張れている、という手前味噌の経営では通じない。

 

この倍率は、現経営陣がビジネスの本源的価値の潜在力を発揮できるかどうか、にかかっている。経営陣はビジネスモデルのアップグレードを語り、それを有言実行しなければいけない。

 

買収に反対する経営陣は、そのギャップをどのようにどのくらいの期間で埋めるかを既存株主に説明し、実行しなければいけない。それができないのであれば買収されるしかない。感情的な反対は許されない。そもそも高い将来期待感を実現できていれば、買収提案など来ない。

 

物言う株主(アクティビスト)も無意味な資本のため込みはダメだと気づかせる効能はあるが、増配などで短期的にバランスシート(貸借対照表)のキャッシュを吸い上げようとする。将来投資に必要なリソースも奪う。同意なき買収者はそうではない。ビジネスモデルや期待値という本源的価値をどれだけ増やせるかで挑んでくる。経営者は本質的な問いに答えを見つけないと、対抗できない。

 


2.買収側の信頼性

同意なき買収に予告TOBが多い点は課題だ。買収価格を宣言しながらも最終的にTOBを実施しない場合、株価操縦につながりかねない。提案された企業にとっても、経営のノイズにしかならない。海外で予告TOBはリアルな提案とみなされないケースもある。法的拘束力のある提案を出し、覚悟を持って実際にTOBをかけるべきだ。

 

買収を仕掛ける側にも信頼性が求められる。よりよい経営ができる、言い換えればバリュエーション(価値評価)がつけられると主張するなら、自分たちのバリュエーションも高くないといけない。

 

つまり誰でもできることではない。あなたたちならできるよね、という蓋然性がないと市場から信用されない。そうでないのに高いお金を払って同意なき買収をするのは、暴走経営者とみられかねない。

 


ご参考)2023/8/31 経産省「企業買収における行動指針
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831003/20230831003.html

 


<感想>
上記は経産省M&A指針の検討委員のインタビュー記事。特に、「企業の経営陣がギャップに気づくべき」「買収側の信頼性」については、双方の本質を突いており、肝に銘じるべき内容だと思う。

 

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