元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、強圧的買収に対する法制度が未整備?


経産省M&A指針:強圧的手段への法整備企業 】

 


 2024/5/20、日経電子版に、「強圧的手段に法整備を 弁護士 石綿学氏」が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD3047W0Q4A430C2000000/

 

 以下は記事の抜粋+1〜4の追記。

 


いしわた・がく 東大法卒、シカゴ大学ロースクール卒。M&Aコーポレートガバナンスなどが専門。経産省の「企業買収における行動指針」策定に委員として関与

 


1.経営者が選択肢の一つと捉えるM&A

同意なき買収の提案が増え、M&A(合併・買収)が活性化しているのはいい傾向だ。経営者が選択肢の一つと捉えるようになり、潜在的な案件も増えている。良い経営資源を有効活用できていない企業の再編などが持続的に進めば、日本経済にプラスだ。

 

ただ、経営上の選択肢としてものすごく魅力的かというと、必ずしもそうではない。買い手は強気の買収価格でステークホルダーを説得する必要があり、投資コストがかさむ。買収後の減損や人材流出などが生じる恐れもある。

 

事業シナジー(相乗効果)など企業価値向上の相当な施策がないと成功につながりにくい。プライベートエクイティ(未公開株)ファンドで同意なき買収をしないところもあるのは、投資リスクが高いからだ。友好的、合理的な価格で買収できるならそれに越したことはない。

 


2.同意なき買収

ブームに乗って行われる同意なき買収の中には、最終的に成功と評価されないものも相応にあるはずで、「やはり友好的な買収の方がいいよね」と冷静になる時代がくると思う。米国では難易度の高さが既に認識されている。

 

同意なき買収そのものの経済効果というよりは、同意なき買収提案の対象になり得るという危機感が経営者の間で共有され、企業価値向上の意識が強まることの方が大事だ。変革に向けて果敢に挑戦する風土が生まれるといい。これまで一応幸せな企業社会が実現できてしまい、危機意識は乏しかったと思う。

 


3.強圧的買収への手当て

15日には、公開買い付け規制を18年ぶりに本格的に見直すことなどを盛り込んだ改正金融商品取引法が成立したが、(不当に低い価格での買収に応じるよう強いるなどの)強圧的買収への手当てはされていないなど、日本のM&A法制はいまだ発展途上の段階にある。引き続き改善の努力が必要だ。

 

裁判所が対抗措置(買収防衛策)の有事発動を認めるのは、通常、買収に強圧性があるケースだ。防衛策は問題だと議論するだけでなく、強圧的買収に対する適切な法制度があれば、防衛策の必要性も小さくなる。

 

金融審議会のワーキング・グループでは強圧的買収の対策として具体的な案がいくつか議論されたが、最終的に採用されなかった。日本では強圧的買収に対する法制度上の手当てがされていないため、防衛策が必要な状況が残る。

 


4.グローバルベースでの日本の対応

各国が日々刻々と変わる経済活動や実務ニーズを踏まえて制度間競争をするなか、日本も遅れないようにしなければならない。これだけ資本市場がグローバル化しているのに、海外にはある制度が日本にない場合もある。

 

例えばシンガポールなどは、世界的に魅力的な法制度のインフラをスピード感をもって世界の企業に提供するよう努めているようにみえる。日本もスピード感を持って取り組まないと世界から取り残されてしまう。

 

ルールメーキングの過程で様々なしがらみがあり、結果として適切な法整備が行われないこともある。立法過程での透明性向上や説明責任も重要だ。

 


<感想>
石綿弁護士の指摘の通り、グローバルベースで遅れることのないよう、日本国内の適切な法整備が望まれる。

 

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