元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、日銀にはマネーストックを増やす政策を期待?

 

マネーストックを増やしてデフレを止める 】


以下は、「日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門」(藤沢数希著、ダイヤモンド社)からの一部抜粋。(その2)

 


第2章 小一時間でわかる経済学の基礎知識


貨幣数量理論による物価とお金の関係

 

世の中の物価とお金の総量の関係にはすごく簡単な関係があります。これは次のような式で表されます。

 

MV=PY

 

ここでMは世の中に出回っているお金の総量、Vは世の中で1年当たりにお金が何回使われるか、つまりお金が何回自分のご主人様を変えるかを表す取引流通速度です。Pはモノとサービスの平均単価で、Yは世の中で1年間に取り引きされるモノとサービスの総数です。

 

この関係式は理論でもなんでもなくて常に成り立つ恒等式です。MVが1年に使われたお金の合計を表し、PYがそれは1年で取り引きされたモノとサービスの金額の合計と同じだといっているだけです。恒等式なのでこの関係は常に成り立つのですが、それはただ単に常に成り立つように言葉が定義されているだけで、何か経済の真実を教えてくれるわけではありません。

 

しかし、ここでPをGDPデフレーター、Yを実質GDPと考えてやれば、PYは名目GDPになります。また、Mをマネーストックと考えましょう。要するにこの式は、

 

マネーストック×貨幣流通速度=名目GDP=物価水準×モノとサービスの総量

 

ということをいっているわけです。

 

ここでV(貨幣流通速度)がほぼ一定だと考えれば、この式は急におもしろい理論になります。

 

 

1年間にパンを買う回数も家賃を払う回数も、そんなに変わるものではないだろうと考えるのです。

もちろん景気がいい時はお金がたくさん回りますし、景気が悪くなるとお金の回りも悪くなりますが、ここではとりあえず貨幣流通速度は概ね一定だと考えます。

 

国内で生産するモノとサービスの総量、つまり実質GDPは経済の実力を表すものですが、これも年間数%成長したりしなかったりする程度のものなので、それほど変化するものではありません。

そうすると、結局のところ物価というのは中央銀行が民間の銀行の信用創造を通して間接的に誘導するマネーストックでほとんど全部決まるという話になります。マネーストックを2倍にしたら物価も2倍(貨幣の価値が半分)になります。マネーストックを半分にしたら物価も半分(貨幣の価値が倍)になります。これが貨幣数量理論です。株式分割して発行済み株式数を2倍にすると株価が半分になるのとちょっと似ています。

 

そこでフリードマンのように市場の力を信じる経済学者は、政府や中央銀行は恣意的に財政政策をしたり金融政策をしても経済は混乱するだけで何もいいことはない。

 

また、日本が15年以上もデフレに苦しんでいた時に、人為的なインフレーション政策を唱える一部の経済学者は「なんで日銀はどんどんマネーストックを増やしてデフレを止めないんだ?日銀はアホでバカで間抜けだ」とこき下ろしました。
世界的な経済学者であるバーナンキクルーグマンも日銀をこき下ろしていました。


日本国民の多くはデフレで苦しんでいるのに、どうして日銀はそんな簡単なことができないのかと思ったのです。FRB議長のベン・バーナンキが「日銀はお札を刷ってヘリコプターからばらまけ」と言ったのは有名です。それから彼のあだ名はヘリコプター・ベンと呼ばれています。しかし、じつは次章で説明するように、日銀がゼロ金利の状態で物価の下落を止めることは非常にむずかしいことがだんだんとわかってきました。この点に関してはバーナンキクルーグマンはむしろ楽観的すぎたかもしれません。

ところで、世の中に出るお金の総量というのは、実質GDPが成長して経済規模が大きくなればどんどん増やしていかないといけません。中央銀行はこのような場合は満期の長い長期国債を買ったりして半永久的にマネタリーベースを増やします。つまり経済がどんどん成長していけば、物価を安定させたままどんどんお金の量を増やしていけるのです。

 


<感想>
 日銀には、もっとマネーストックを増やす政策を実施してほしい。

 

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