【 エマニュエル・トッド:ウクライナ戦争 】
先日、エマニュエル・トッド著「第三次世界大戦はもう始まっている」(大野舞訳、文春新書)を読んだ。
以下は一部抜粋。(その1)
2022年3月23日収録
初出『文藝春秋』2022年5月号に「日本核武装のすすめ」として一部掲載
「戦争の責任はNATOにある」
アメリカでは議論が起きています。この戦争が、地政学的・戦略的視点からも論じられているのです。
その代表格が、元ベア空軍軍人で、現在、シカゴ大学教授の国際政治学者ジョン・ミアシャイマーです。
ミアシャイマーが出した最初の結論は、「いま起きている戦争の責任は、プーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにある」ということです。
「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確に警告を発してきたにもかかわらず、アメリカとNATOがこれを無視したことが、今回の戦争の原因だとしているのです。
「NATOは東方には拡大しない」という約束
冷戦後、NATOは東方に拡大しましたが、これには、二つの画期がありました。ポーランド、ハンガリー、チェコが加盟した1999年と、ルーマニア、ブルガリア、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニアが加盟した2004年です。
ドイツ統一が決まった1990年の時点で、「NATOは東方には拡大しない」といった”約束”がソ連に対してなされていましたが(当時のソ連書記長ゴルバチョフに対し、1990年2月9日、アメリカのベーカー国務長官が「NATOを東方へは1インチたりとも拡大しないと保証する」と伝え、翌日にはコール西独首相が「NATOはその活動範囲を広げるべきでないと考える」と伝えている--編集部注)、にもかかわらず、ロシアは、不快感を示しながら二度にわたるNATOの東方拡大を受け入れたのです。
その上で、2008年4月のブカレストでのNATO首脳会議で、「ジョージアとウクライナを将来的にNATOに組み込む」ことが宣言されました。
その直後、プーチンは、緊急記者会見を開き、「強力な国際機構が国境を接するということはわが国の安全保障への直接的な脅威とみなされる」と主張しました。つまり、この時点でロシアは、「ジョージアとウクライナのNATO入りは絶対に許さない」という警告を発し、「ロシアにとって越えてはならないレッドライン」を明確に示していたわけです。
そして2014年2月22日、ウクライナで、「ユーロマイダン革命」と呼ばれる「クーデター」--民主主義手続きによらずに親EU派によってヤヌコビッチ政権が倒される--が発生しました。
これを受けて、ロシアはクリミアを編入し、親露派がドンバス地方を実効支配しましたが、それは住民の大部分が、この「クーデタ」を認めなかったからです。
<感想>
アメリカとNATO側の視点ではなく、プーチンとロシア側の視点からみれば、ウクライナ戦争は全く違った構図となる。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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