【 中露の帝国主義に伴う危機への対応 】
先日、「ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界」(峰村健司他、幻冬舎新書、2022年9月)を読んだ。
以下は、一部抜粋。(その4)
「ルールに基づく国際秩序」を再建するのが日本の国益
細谷(慶應義塾大学法学部教授) 核兵器を保有せず、攻撃的な軍事力も十分に持っていない日本がニヒリズムに陥り、「国際社会はパワーポリティクスまから、ロシアがウクライナを侵略するのも当然だ」などと偽悪的な態度を取るべきではありません。正義の問題とは別に、自らの国益の観点からも、ルールに基づく国際秩序を世界に定着させる努力をすべきではないでしょうか。
おわりに--帝国主義に逆襲される世界
アメリカ政府の対中政策は、リチャード・ニクソン大統領が訪中した、1972年以来、中国を支援することで中間層を豊かにして改革を推し進めようという「関与政策」が基軸となってきた。中国の最高実力者、 鄧小平もこれに応えるように、改革開放政策を推し進めたことで両国関係は安定期が続いてきた。
ところが2017年にドナルド・トランプ氏が大統領になると一変。アメリカ政府はそれまでの関与政策と決別し、中国に対して貿易戦争を仕掛けた。中国を「戦略的競争相手」と位置付けて、総合依存度の高い経済システムから、デカップリング(分断)のプロセスに舵を切ったのだ。
これに対し、中国の習近平政権も、関税引き上げや規制強化によって報復したことで、両国関係は一気に悪化した。さらに国内政策では、マルクス主義を前面に打ち出して、改革開放路線を修正、格差を是正してともに豊かになるという「共同富裕」を展開した。習政権は、社会主義に先祖返りするような動きを強めることとなり、アメリカが率いる民主主義陣営との「体制間競争」に突入した。
米中両国の経済的なつながりは、米ソ間とは比べものにならないほど強い。中国にとってアメリカは最大の貿易相手国であり、トランプ政権以降も両国間の投資や人的交流は依然として活発だ。国際政治の経済的な相互依存は、紛争や対立を抑止すると言われてきた。ところが、両国はその依存関係を「人質に取り、外交の武器として制裁の応酬を繰り返している。2018年に中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長がアメリカ政府の要請を受けたカナダ当局に逮捕され、中国当局が報復としてカナダの元外交官ら2人を逮捕したのはその典型と言える。
プーチンが理想とする世界はどのようなものなのだろうか。22年6月の会合で語った、ロシアの皇帝ピョートル大帝が18世紀にスウェーデンとの戦争を制して領土を拡大した歴史を引き合いに出したら表現がすべてを物語っている。
「大帝がスウェーデンとの戦争で何か奪ったという印象をみなさんは抱いているだろう。だが、何も奪っていない。取り戻したのだ。領土を奪還し、強固にすることは我々の責務だ」
プーチン氏は自らを、北方戦争でスウェーデンに勝利してバルト海の派遣を確立し、ロシアを欧州列国と並ぶ地位に押し上げたピョートル大帝と重ね合わせ、ウクライナ侵攻を正当化してみせた。しかも、侵攻の目的が「帝国ロシアの復活」であることを言明したのだ。
そのロシアと歩調を合わせて、アメリカ覇権の打破を目指しているのが中国だ。習近平氏は中国共産党トップとなってから「中国の夢」を政治スローガンに掲げ、「中華民族の偉大なる復興」に向けて邁進している。2021年7月に北京であった中国共産党創立100周年記念式典で、次のように演説している。
「1840年のアヘン戦争後、中国は徐々に半植民地化・半封建社会となり、国家が辱められ、人民が苦しめられ、文明が失われて、中華民族は未曾有の災難に見舞われた。そのときから、中華民族の偉大なる復興が中国人民の最も偉大な夢となった。中国共産党と中国人民の勇敢で粘り強い奮闘により、中華民族が分割され、侮辱される時代は過去のものとなった」
習氏が描く「中国の夢」も、清朝が滅亡する前の「中華帝国の復活」を目指しているのはこの演説からも明らかだ。
国際秩序の変動期に差し掛かっていることを、政府だけではなく国民一人ひとりが自覚することが大切だと考える。新秩序のもと生き残るための新たな国家戦略や国のあり方について、国を挙げて議論するときに来ている。
本書がその一助になれば、著者一同の喜びである。
2022年8月 峰村健司
<感想>
上記の通り、中露の帝国主義による国際秩序の変動期の危機に関して国民一人ひとりが自覚して、新たな国家戦略や国の在り方について、国を挙げて議論する必要がある。
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