2024/3/6、文春オンラインに、『《佐藤優が徹底解説》ハマス掃討を徹底的に行なおうとするイスラエル側の「内在論理」とは?』が掲載された。https://bunshun.jp/articles/-/69183
以下は、一部抜粋。
佐藤 ハマスの攻撃に対するイスラエルの対応は、おそらく多くの日本人には「行き過ぎ」に見えるでしょう。しかし、ハマス掃討を徹底的に行なおうとするイスラエル側の「内在論理」はどんなものなのか。これを理解せずには、この紛争を停戦や和平に導くことはできません。日本の報道にはその視点が欠けています。
もちろん意見や立場の違いはあっていい。しかし、情勢分析では「事実」「(当事者の)認識」「(分析者による)評価」の区別が不可欠なのに、日本の報道の多くは情緒的すぎて、この3つを無自覚に混同している。
「シファ病院の地下にハマス司令部の施設があった」というイスラエル側の主張には私も疑問を感じていて、間違いだったとすれば、以前に比べ劣化した情報機関内で誰かが不正確な情報を上げた可能性があると見ています。
日本の報道で問題なのは、「ハマス」と「パレスチナ」を区別せず、「ガザ紛争」と「ウクライナ戦争」を同列に扱っている点です。
今回の紛争は、イスラエルに居住するユダヤ人とユダヤ人国家の「生存権」を認めずにテロ行為に走ったハマスの行為に端を発するもので、「イスラエルとパレスチナの関係一般」に還元できる話ではありません。
また、ウクライナ戦争が「ロシアによる侵攻」を契機とする「国家間戦争」であるのに対し、今回の紛争は「イスラエルとパレスチナの戦争」ではなく、「ハマスというテロ組織に対するイスラエルの掃討作戦」です。
イスラエルがガザで展開している「地上での軍事作戦」について、日本のメディアの多くは「地上侵攻」と表しています。しかしこの表現では、イスラエルとガザとの基本的関係が見えなくなる。「侵攻」とは、「相手国家の主権を侵害して攻撃すること」ですが、ガザは「主権国家」ではない。「地上侵攻」は、「イスラエルが国際法に違反している」というハマス側に立った表現で、少なくとも「中立的」ではありません。
「我々は全世界に同情されながら死に絶えるよりも、全世界を敵に回してでも生き残るために戦う」が、ホロコーストを経験したイスラエル国民の総意です。
イスラエルは、国家としての「自衛権」というより、ユダヤ人とイスラエル国家の「生存権」の行使としてハマス掃討作戦を展開しています。そう対応せざるを得ないのは、ハマスの方が、領土や利権をめぐる争いではなく、「ユダヤ人であるがゆえに地上から消滅させる」という「属性排除」の論理で動いているからです。ナチスと同じ論理で、イスラエルの乳児が意図的に殺害されているのがその証しです。ガザの病院での戦闘で乳児が巻き込まれたという話とは明らかに異なります。
< 冒頭の事実・認識・評価について(まとめ)>
事実:ハマスが、「ユダヤ人であるがゆえに地上から消滅させる」というナチスと同じ「属性排除」の論理で、意図的にユダヤ人を殺害していること
当事者の認識:ユダヤ人とイスラエル国家の「生存権」の行使としてハマス掃討作戦を展開していること
分析者による評価:「イスラエルとパレスチナの戦争」ではなく、「ハマスというテロ組織に対するイスラエルの掃討作戦」であること
<感想>
イスラエルの作戦は、「パレスチナではなく、ハマスというテロ組織」に対するものであることを忘れてはなるまい。
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