「天気の子」を見た勢いで、「小説 言の葉の庭」(新海誠著、角川文庫)を読んでみた。
原作が映画(2013年公開。46分)の小説版。本書は、『ダ・ヴィンチ』(2013/9号〜2014/4号)に掲載され、書き下ろしを加えて2014/4に単行本化されたものを文庫化したもの。
あとがき(一部抜粋)
うきうきと取りかかっていた執筆作業であるが、当たり前にというかなんというか、楽しさは持続しなかった。映像のほうがどうしたって優れている、または適している表現もあることに、すぐに気づくからである。
たとえば「情?」のようなもの。街の夜景の絵を描くとする。そこに、切なさを含んだ音楽をかぶせる。どのタイミングでも良いので、どこかの窓の光をひとつ灯す、あるいはふいに消す。それだけで、情?としか呼びようのない感情を観客にいだかせることが、映像ならばできる。情?とは要するに「人の営みがかもしだす感情」だから、窓の灯りひとつで、映像ならばそれを喚起させることができるのだ。では小説でこれに比する表現はどうすればよいのだろうと、頭を抱えることになる。
長くなるので詳しくは書かないけれど、他にもメタファー(暗喩)の類は、映像のほうが雄弁たり得ることもおおい。1カットの波紋のアニメーションだけで、原稿枚数を費やしても足りない感情を伝えることが、時にできる。
さらに最終的には技術的な部分とは関係なく、何を書くのかという至極当たり前のことがらに悩み続けることになる。脱稿する頃には、ああ小説って、小説家ってすごいなと、なんかぜんぜん近づけなかったなと、いささかがっくりと思ったのである。
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<感想>
原作の映画は、孝雄と雪野ふたりの視線のみからなる46分の中編。
本小説は、語り手を増やし、映画だとしたら2時間に収まらないボリュームで、新たに組み立てなおしたもの。
あとがきからは「餅は餅屋」という言葉が頭に浮かぶ。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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