【 略式起訴の問題 】
略式起訴の問題点について、以下のWebsiteから考えてみたい。(その3)
刑事責任あいまいに?問題含み「略式起訴」の実態
公開裁判でないため冤罪が発生するリスクも
https://toyokeizai.net/articles/-/438815
菅原一秀・前経済産業相が地元で香典など総額80万円相当を渡したとされる公職選挙法違反の事件で、東京地検特捜部は6月8日、菅原氏を略式起訴した。報道によると、東京簡易裁判所は、6月16日付けで、罰金40万円、公民権停止は3年とする略式命令を出したとされている。
この事件で検察は当初、菅原氏を不起訴(起訴猶予)にしたが、検察審査会の「起訴相当」議決を受けて再捜査した結果、刑事事件として処罰することにしたようである。しかし、検察官は通常の刑事裁判ではなく「略式起訴」「略式命令」という簡易な手続き(略式手続)を求めた。
まず大原則として、刑事裁判は公開の法廷で、法律で決められた手続きにのっとって行わなければならない。憲法37条1項は「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」と定めている。
ところが、刑事訴訟法は一定の犯罪について、公開の法廷での正式な裁判を開かずに略式命令という裁判によって刑罰を科すことを認めている。
令和元年の裁判所の統計によれば、地方裁判所と簡易裁判所で起訴(公判請求)された事件(人員)の総数29万9963人のうち略式手続で処理された事件(人員)は20万4132人であり、実に約7割が略式手続で処理されている。そして、略式手続で処理される事件の約8割はスピード違反などの罰金で処理される道路交通法違反の事件であると言われている。
この略式手続は、すべての事件について公開の法廷で時間をかけて審理をすると裁判所の人員、設備がパンクしてしまうことから、裁判所の負担を軽減する目的がある。
略式手続は、公開の法廷が開かれることがなく、書面審理だけで罰金刑が科せられてしまうことから、一般の国民は、審理の過程を知る機会が与えられないまま刑事事件の審理は終了してしまう。
刑事裁判は、事案の真相を解明して、罪を犯した者に対しては適切な処罰を行うことを目的としている手続きである。そのことからすれば、略式手続は、そのような刑事責任追及をする手段を放棄することを意味する。そのため、犯罪者に対する処罰を厳正に行わなければならないと考える立場から疑問が出ても不思議ではない。
<感想>
被疑者の動機を知る機会が与えられる「公開の法廷」と違い、「略式手続」では、事案の真相が解明されることなく、また刑事責任を追及する手段が放棄されることが残念だ。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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