【 中学生からの大学講義:鹿島茂 】
以下は、「続・中学生からの大学講義1 学ぶということ」(ちくまプリマー新書)からの一部抜粋。
考える方法 鹿島茂
「考える」とは答えのないことについて考えること
本当に「考える」ということは、答えがないことについて考えることなのです。ところが、日本の学校では、覚えることは教えるけれど、考える方法については教えないのです。
皆さん、「試験があって大変だな」と思っているでしょう? でも、実をいうと、試験なんて楽なもんですよ。答えが決まっているからです。答えのない試験はありません。必ず正解がある。それを考えればいい。こんな楽なことはありません。
でも、これから皆さんが学校を卒業し社会へ出ると、正解のないことを考えなければいけません。社会は正解を用意してくれてはいないからです。
それゆえ、正解のないことを自分の頭で考えるには、「考える方法」を身につけることが第一なのです。
すべてを疑い、比較して差異と類似を発見する
デカルトが『方法序説』で述べている「考える方法」には四つの原則があります。たった四つの原則を守ればいいのです。
1.すべてを疑おう
2.分けて考えよう
3.単純で分かりやすいものから取りかかろう
4.可能性をすべて列挙、網羅しよう
これが四つの原則です。実をいうと、これは、デカルトの時代から今日に至る科学の世界を築いてきた基礎でもあります。
すべてを疑う。この原則に物事を照らし合わせて最後に合格したものだけを残して、次のステージに進む。つまり日本語でいえば「徹底吟味する」。これが第一原則の意味です。
第二原則の「分けて考えよう」も重要です。デカルトの第二原則の正しい意味は、物理や化学ではできるだけ小さな部分に分けていくと考えやすいということで、この考え方を後の科学者が応用した結果、分子、原子、量子といったものが発見されたのです。
あるカオスを前にして、これをどうやって分ければいいのか考えてみる。そのときに使われる手法が「比較」です。比較から発見できるのは「差異」と「類似」です。これとこれは違う。これとこれは同じだ。
説得の技術として、いきなり複雑でむずかしいことを示すのではなく、まず誰にでもわかるような単純で明確なことから話していくのが常道です。そして、その単純で明確なことに相手が同意したら、その上に、もう少し複雑なものを載せるようにして、最後は最も複雑で難解なことに至るのですが、第三原則はこの説得の順番に応用されているのです。
では、第四原則「可能性を列挙、網羅しよう」はどうでしょうか?
これは論文を書くうえで、絶対に不可欠な反論の検証の部分で使われています。
論文というのは、観察、比較検証、原因の割り出し、仮設というそれぞれの部分で、自分と違う考えの人がいるものと仮定して、その人が立てるであろう反論を撃破してゆくことが不可欠です。そのときには、考えうるありとあらゆる反論を予想しなければなりません。
さっき、すべてを疑う前に自分を疑え、と言いました。実は自分が一番当てにならないのです。ですから必ず自分が間違いを犯すという前提で勉強することが必要です。
<感想>
答えがきまっている試験と正解のない学校卒業後の社会。
デカルトの四つの原則を守って、正解のないことを自分の頭で考えてゆきたい。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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