元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、プレファレンスの向上に経営資源を集中?

 

【 確率思考の戦略論:市場構造の本質 】

 


 先日、久しぶりに森岡毅氏の「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(今西聖貴・共著、角川書店)を読み返してみた。

 

 以下は一部抜粋。

 


第1章 市場構造の本質 

 

市場構造とは何か?
 
 市場構造とは、ある商品カテゴリー(例えばシャンプーやスタイリング剤なのでヘアケア市場)における、人々の意思と利害と行動が積み上がった全体としての業界の仕組みのことです。消費者、小売業者、中間流通業者、製造業者など、ビジネスに関わる全てのプレイヤーの思惑と利害がミクロのレベルで様々に衝突し、それぞれの力関係に沿ってある一定の「やり方」に収束していきます。市場構造とは、つまり簡単に言えば「その市場における全体としての人々のやり方」のことです。
 
 市場構造を形づくっている「本質」を、市場構造に見える様々な現象の奥底から探してみましょう。それら市場構造を決定づけているDNA、あるいは震源ともいうべき「本質」はいったい何でしょうか? いきなり核心の答えを申し上げますが、それは消費者のPreference(プレファレンス)です。

 

 プレファレンスとは、消費者のブランドに対する相対的な好意度(簡単に言えば「好み」)のことで、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決定されています。プレファレンスが市場構造を支配するのは、小売業者も、中間流通業者も、製造業者も、最強の存在である最終購買者(消費者)に従わざるを得ないからです。市場構造を決定づけているDNAは、消費者のプレファレンスであることを頭の中に入れてください。

 


市場構造の本質はすべて同じ

 

 市場構造の本質とは何でしょうか? それは「消費者のプレファレンスによって決定される購買行動の仕組み」が、どのカテゴリーにおいても同じということです。消費者が自由に意思決定できる限りにおいて、どの市場構造もそれを支配している法則は同じなのです。

 


ブランドも同じ法則に支配されている

 

 消費者のプレファレンスを核とした購買行動によって決まっているのは、全てのカテゴリーの市場構造だけではありません。1つ1つのブランドも、同じ法則によって支配されているのです。それは消費者のプレファレンスによって決まるという心理です。

 


経営資源を集中すべきは、プレファレンスである

 

 これらを結論づけると、消費者のプレファレンスを核とした購買行動によって決まっているのは、全てのカテゴリーの市場構造だけではありません。「市場競争とは、1人1人の購買意思決定の奪い合いであり、その核心はプレファレンスである」という真理に辿りつきます。ピーター・ドラッカーは「ビジネスの目的は顧客の創造だ」と言っています。確かにその通りです。しかし、そう創造された顧客が購入する商品やサービスのカテゴリーが一旦成立した時点で、市場シェアの争奪戦が始まります。市場の大きさは下の式で計算できます。

 

 市場の売上=延べ購入回数×1個当たりの平均購入個数×平均単価

 

 ここで競合と奪い合っているのは、延べ購買回数におけるシェアです。1購入当たりの購入個数や平均単価において、直接的な奪い合いがおこっている訳ではありません。すなわち、我々は購入意思決定の争奪戦を行っているのです。

 

 購入意思決定は、そのカテゴリーにおける消費者が持つ相対的なプレファレンスによって決まっています。我々が奪い合っているのは消費者のプレファレンスそのものなのです。それゆえ市場競争において、企業は消費者のプレファレンスを上げることによって経営資源を最大に集中すべきなのです。それは、数学的に導き出されて担保された真理であることを強調しておきます。

 

 プレファレンスを上げることはシェアを上げることに等しく、シェアが上がると結果として売上が直線的に伸びる以上に、会社のパフォーマンスを上げることができます。それは利益率や配荷率や認知率などの様々な経営効率が相乗的に上がっていく、成功が成功を呼ぶ正のスパイラル(ガンマ分布)を巻き起こすことができるからです。

 

 だからこそ、どの企業も消費者視点を最重視して、プレファレンスの向上に経営資源を集中せねばなりません。その当たり前の法則を実行するにあたって、消費者を理解してプレファレンスを高める戦略と戦術の両方を専門とするマーケターの優劣に、企業は自らの運命を大きく依存しているのです。マーケターが創ろうとしている「自社ブランドが選ばれる必然」も、その正体は、消費者の自社ブランドに対するプレファレンスに他ならないのです。

 


<感想>
消費者視点を最重視して、プレファレンスの向上に経営資源を集中し、シェアを高める(⇒売上↑)ための、マーケターの戦略と戦術が極めて重要であるのは間違いない。

 

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