元証券マンが「あれっ」と思ったこと

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あれっ、準共有株式の不統一行使説?


【 株式の相続:株式の準共有 】

 


 日本証券業協会のWebサイトに、添付資料が掲載されていた。
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/202310nakayouyaku2.pdf

 以下は一部抜粋。

 


2023年10月
「株式の相続―株式の準共有を中心に」
第8期 客員研究員 大阪公立大学大学院法学研究科 准教授 仲 卓真

 


1.準共有株式についての権利の行使を規律する会社法106条本文の適用範囲について

 

最高裁は、会社訴訟を提起する権利についても会社法106条本文が原則として適用されると判示しているものの、従来の学説では、会社訴訟を提起する権利については会社法106条本文が適用されないという見解も主張されていた。

 

これに対して、近時の会社法理論では、このような従来の学説の理由づけが説得的ではないことが示されるとともに、会社訴訟を提起する権利が裁判所を介して行使されるという理由から、この権利について会社法106条本文を適用する必要がないことを基礎づけることができるということが明らかにされた。

 


2.会社法106条にいう権利行使者の指定の方法について

 

従来、準共有者の全員一致によってのみ権利行使者を指定できるという見解も主張されていたものの、判例および多くの論者は、準共有者の準共有持分の過半数によって権利行使者を指定できると考えてきた。

 

これに対して、近時の会社法理論では、共有物の保存行為に準じて各準共有者が単独で権利行使者を指定できるという見解が主張されている。この見解に対しては、単独での権利行使者の指定が競合した場合にはどの指定が優先すると考えるのかというような疑問もあるものの、この見解は、準共有株式についての議決権の不統一行使の実効性を確保する方途の一つを示すものとして今後更に検討されるべき可能性を有している。

 


3.準共有者の権利行使に係る意思決定の方法について

 

従来は、民法の共有に関する規定がそのまま適用され、例えば、準共有株式についての議決権の行使に係る意思決定は、 特段の事情のない限り、民法252 条1項により、準共有者の準共有持分の過半数で決すると考えられてきたものの、準共有株式についての議決権の行使に係る意思決定において各準共有者がその準共有持分の割合に応じた不統一行使を主張できるという見解(以下「不統一行使説」という)も主張されていた。

 

そして、近時の会社法理論では、このような不統一行使説がより円滑な事業承継の実現という観点からも基礎づけられると主張されているとともに、不統一行使説を実現するための法的構成として2つの見解が主張されている。

 


民法
(共有物の変更)
第二百五十一条
 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない。

 

(共有物の管理)
第二百五十二条
 共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

 

(準共有)
第二百六十四条
 この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

 


会社法(共有者による権利の行使)
第百六条
 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

 


<感想>
近時の会社法理論では、準共有株式について、不統一行使説が有力なようなので、50%超押さえれば問題ない(議決権100%行使可能)という考えは危ういように思われる。

 

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