【 日銀が3月にマイナス金利を解除する理由 】
2024/3/13、楽天証券の愛宕伸康氏が、「日銀が3月にマイナス金利を解除する理由とその後の政策運営」について、解説された。
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/44552
以下は、その概要。(その2)
< 追加利上げには慎重な姿勢 >
「深刻なあるいは大きな不連続性が発生するような政策運営は、現在みている経済の姿からすると、避けられるのではないかというふうにみております。」
つまり、植田総裁の頭に中に追加利上げがあることは明らかですが、追加利上げを行っていくとしても、そのペースは緩慢なものになるということが、上の発言から読み取れます。内田副総裁も2月8日の講演で、同様の発言をしています(下記)。
「仮にマイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになると思います。」
このように、日銀が追加利上げに対して慎重であることは間違いないわけですが、注意しなければならないのは、それを3月のマイナス金利解除時に強調し過ぎると、為替が円安に振れる可能性があるということです。
かといって、追加利上げの可能性を匂わせると長期金利が不安定化する恐れもありますので、日銀はかなりデリケートなコミュニケーションを迫られることになりそうです。
< 重みを増す「多角的レビュー」~柔軟で機動的な政策運営への転換~ >
そもそも「物価安定の目標」の実現が「十分な確度をもって見通せる状況になった」と宣言してしまって大丈夫なのでしょうか。
植田総裁ならずとも、今の段階で2%実現が見通せると宣言することには、ためらいを感じるのではないでしょうか。
しかし、そもそもインフレーション・ターゲティング(物価目標)という金融政策手法は、インフレ率を特定の数値にピンポイントで誘導するような厳格なものではありません。金融政策運営の柔軟性や機動性を担保するため、目標値にある程度インプリシットな幅を持たせ、柔軟に捉えるのが普通のやり方です。
日銀でも、現在のようなガチガチな運営から、インフレーション・ターゲティング本来の柔軟な運営に移行する必要があります。そうした運営の下でなら、2%実現が見通せると宣言するハードルは高くないですし、金融政策の柔軟性・機動性も回復、市場の副作用も軽減することになります。
以前から指摘している通り、そうした柔軟な運営へ移行するための仕掛けが「多角的レビュー」ではないかとみています。多角的レビューとは、現在日銀が行っている、これまで長年にわたって行ってきた非伝統的金融政策に対する検証のことで、昨年12月に1回目のワークショップが開催され、今年5月に2回目のワークショップが開催される予定です。
そこで、消費者物価上昇率が2%に収束する蓋然(がいぜん)性や、物価安定の目標「2%」の政策運営における位置付けなどが議論され、その結果をもって、その後の金融政策運営を柔軟な本来のインフレーション・ターゲティングに移行することが、現時点で想定され得るベストシナリオだと考えています。
<感想>
マイナス金利解除後については、愛宕氏の言うように、物価安定の目標「2%」を「2%プラスマイナス1%」という柔軟なものに切り替えた上で、利上げの余地をより大きく残しておくことが望ましいものと思われる。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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