【 日銀が3月にマイナス金利を解除する理由 】
2024/3/13、楽天証券の愛宕伸康氏が、「日銀が3月にマイナス金利を解除する理由とその後の政策運営」について、解説された。
以下は、その概要。(その1)
「日米金利正常化カレンダー」予想(2024年前半)
日銀・金融政策決定会合:3月(18-19日)マイナス金利解除(政策金利0~0.1%)、4月(25-26日)現状維持、6月(13-14日)利上げ(0~0.2%、当座預金への付利0.2%)
米国FOMC:3月(19-20日)、5月(4/30-5/1日)、6月(11-12日)、いずれも現状維持
< 3月にマイナス金利が解除されると予想する背景 >
1.日銀による春闘を強調した積極的な情報発信
内田眞一副総裁(奈良県金融経済懇談会、2024年2月8日)
・好循環を確認したうえで、2%を見通せるようになったというふうに判断する かどうか、・・・当然ですけれども、春季労使交渉の状況というのは、重要なファクターの一つになるというふうに思っています。
・賃金と物価というのが、きわめて重要なファクターであり、その中にあって 春闘というタイミングで賃金の部分が確認できるということはですね、これは重要なイベントであろうというふうに思っています。
高田創審議委員(滋賀県金融経済懇談会、2024年2月29日)
・私自身としては、現在の日本経済について、不確実性はあるものの、2%の「物価安定の目標」実現が漸く見通せる状況になってきたと捉えています。
・今日のきわめて強い金融緩和からのギアシフト、例えば、イールドカーブ・ コントロールの枠組みの解除、マイナス金利の解除、オーバーシュート型コミットメントの在り方など、出口への対応も含め機動的かつ柔軟な対応に向けた検討も必要と考えています。
中川順子審議委員(島根県金融経済懇談会、2024年3月7日)
・わが国経済は、高水準の企業収益に支えられ、賃金と物価の好循環が展望できると考えています。
2.春闘の賃上げ率が4%を超える可能性が高いこと→実際は5.28%!(3月15日)
3月15日の第1回回答集計結果(連合):初回集計5.28%(5%超は1991年以来33年振り)
3.為替:円安加速→インフレ助長
春闘が強い結果→3月MPMで動かない→ 再び円安が大きく進むリスク→インフレ助長→実質所得目減り→消費ますます抑圧(「これでも日銀は弱いと見ているのか」と市場に受け取られる)
4.その他
(1) 「展望レポート」は政策判断に優先しない
「展望レポート」が出るという理由でマイナス金利解除は4月という声あり→展望レポートが政策決定に優先することはない(展望レポートは重要なコミュニケーション・ツールの一つだが、金融政策の判断は展望レポートが出る出ないにかかわらず、MPMごとにその時の指標や情勢に基づいて下されるのが原則)
(2) 4月まで判断を持ち越すケース
春闘要因を打ち消す何か、例えば景気の急変とか自然災害といった突発的な事象が生じた場合と考えられる
異次元緩和が開始される直前まで設定していた、無担保コールレート(オーバーナイト物)「0~0.1%程度」に戻される
内田副総裁の2月8日の講演(下記)もそれをサポートする内容
「マイナス金利の導入前には、日本銀行の当座預金取引先の超過準備に0.1%の金利を付利し、取引先でない金融機関との裁定取引が行われる結果、短期金融市場では、無担保コールレートが0~0.1%の範囲で推移していました。
仮にこの状態に戻すとすれば、現在の無担保コールレートは-0.1~0%ですので、0.1%の利上げということになります。」
→ 政策金利を0~0.1%にするのであれば、超過準備に対する付利も0.1%に一本化するのが最も自然
<感想>
3月15日の第1回春闘賃上げ率の回答集計結果(連合)は5.28%(5%超は33年振り)で、ゼロ金利解除の可能性が高まってきた。3月18-19日の金融政策決定会合の結果が待ち遠しい。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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