元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、金融庁が政策保有株の適正開示を調査?

 

金融庁の役割 】

 


 2024/5/28、日経電子版に、「金融庁、政策保有株の適正開示調査へ 全上場企業を対象」の記事が掲載された。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80979570Y4A520C2MM8000/

 

 以下は、一部抜粋。

 


金融庁は全上場企業を対象に、取引先との関係維持などを理由に保有する「政策保有株」を適切に開示しているか調査を始める。保有目的を純投資に切り替えたにもかかわらず、実態は変わっていない事例などがあるためだ。一部企業の行動によって、資本効率の向上を目指す日本市場全体に疑念が生じかねないと判断した。


 はて、金融庁の役割は、金融機関の検査で、企業の調査はやり過ぎではないのか?

 

 以下、確認してみた。

 


< 金融庁の概要 >
https://www.fsa.go.jp/common/about/fsainfo.html

 

金融とは、身体をめぐる血液のようなものであり、資金が適切に供給されていくことで、経済や国民の生活の向上が図られます。金融庁は、金融を取り巻く環境が急激に変化する中にあっても、(1)金融システムの安定/金融仲介機能の発揮、(2)利用者保護/利用者利便、(3)市場の公正性・透明性/市場の活力のそれぞれを両立させることを通じて、企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指すことを目標とし、金融行政に取り組んでいます。

 


< コーポレートガバナンス・コード >
~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~  2021年6月11日 東京証券取引所

 

【原則1-4.政策保有株式】
上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。

上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

 

補充原則
1-4① 上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げるべきではない。

 

1-4② 上場会社は、政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではない。

 


< 質問 >
コーポレートガバナンス・コードの原則1-4「政策保有株式」について、コーポレートガバナンス・コードではその定義が示されておりませんが、どのような株式が該当しますか。
https://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge6931.html

 

回答
「政策保有株式」には、一般的には、上場会社が純投資以外の目的で保有している上場株式のほか、企業内容等の開示に関する内閣府令における「みなし保有株式」などの、上場会社が直接保有していないが、上場会社の実質的な政策保有株式となっているものも含まれます。また、上場会社同士が互いの株式を相互に持ち合う、いわゆる株式の持合いのケースに限定されず、一方の上場会社が他方の上場会社の株式を一方的に保有するのみのケースも含まれます。

 


< 記述情報の開示の好事例集2023 >
金融庁 2024年3月8日(更新)

有価証券報告書のコーポレート・ガバナンスの状況等 8.「株式の保有状況」の開示例
https://www.fsa.go.jp/news/r5/singi/20240308/12.pdf

 

投資家・アナリスト・有識者が期待する主な開示のポイント

 

・政策保有株式の削減実績は、簿価ベースだけでなく、時価ベースでも開示することが有用

 

・政策保有株式の合理的な保有理由の一つとして、経営上の重要な契約等と関連付けた説明をすることが挙げられる

 

・政策保有株主から政策保有株式の売却等の意思表示が示された際に、売却を妨げることはない旨を記載することは、ステークホルダーにとって有用

 

・政策保有目的の株式を純投資目的に区分変更する場合には、区分変更をした理由や区分変更後の議決権行使基準、売却までの想定期間等を開示することが有用

 


< 全体のまとめ >
1.「政策保有株」について、保有目的等を適切に開示していないと、市場の公正性・透明性が担保されない

 

2.市場の公正性・透明性/市場の活力のそれぞれを両立させることは、企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大に繋がる

金融庁の役割として、国民の厚生の増大のために、「政策保有株」について適切に開示されているかを調査/確認する必要がある

 


<感想>
これまで、金融庁の役割を極小的に考え過ぎていたようで、守備範囲が極めて広範なことを改めて認識させられた。

 

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