元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、日銀買入れ国債による有効需要の創出で問題なし?

 

【 コロナ経済対策 】

 


 2020/12/8、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」が閣議決定された。
https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/keizaitaisaku.html

 

 これを受けて、高橋洋一氏が、2020/12/14『「73兆円コロナ経済対策」報道を比べて浮き彫りになった、マスコミの「大きな勘違い」』の記事を掲載された。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78316?page=1&imp=0

 

 以下は記事からの一部抜粋。

 


事業費総額73兆円(財政支出40兆円)のコロナ経済対策がまとまった。財政支出40兆円の内訳は、コロナ拡大防止策6兆円、ポストコロナ経済構造転換18兆円、国土強靭化6兆円、予備費10兆円。

 


まず、潜在GDPと実際のGDPの差であるGDPギャップは、内閣府の推計でも30兆円超もある。


これを放置すると、半年後以降の失業率が上昇する。おそらく失業率2%程度上昇、失業者で見れば120万人程度が増えるだろう。それに伴う自殺者は6000人程度増えるだろう。それはコロナによる死者2300人の2倍以上だ。

 


マクロ経済政策の究極の目標は雇用の確保だ。それができれば自殺者の増加を抑えることもできる。


以上のことから、GDPギャップを経済対策の有効需要で埋めないと後で失業が増え、結果として命が失われるので、経済対策はまず規模というのが、マクロ経済学からは正解になる。

 

ちなみに、今回の経済対策による支出が直接的に実質GDPを下支え・押上げする効果は、内閣府試算によれば3.6%程度だ。これは、財政支出から、予備費、融資などを除いた真水ベースで今回の経済対策が20兆円程度というわけだ。予備費を含めれば、GDPギャップのかなりの程度は埋められるので、マクロ経済政策としてはまずまずの出来といっていいだろう。

 


これまでのコロナ対策では大量の国債発行がなされたが、ほとんど日銀が買い入れている。日銀買い入れ国債について利払いがされるが、それは日銀の収益になって日銀から政府への納付金になる。


このため、政府にとって財政負担はない。これはやり過ぎればインフレ率が高くなるが、今のところ、コロナのためにインフレ目標には程遠い。

 

別の言葉で言えば、コロナショックで需要喪失なので、インフレの心配がなく、しかも通貨発行益を活用するので財政悪化もなく将来世代への心配もない。こうした政府と中央銀行とのコラボは、日本だけではなく欧州でも行われている。

 


なぜ、このようなレベルの低い社説を各紙は出すのだろうか。


それに対する筆者の邪推は、(1)マクロ経済学の無知、(2)財務省からネタをもらうので忖度、(3)新聞が軽減税率を受けているので忖度、のどれかだろう。

 


内閣府モデルでは政府支出乗数は1.1もない。

 

ということは、政府支出に対して誘発される民間需要が1割にも満たないこと意味しており、GDPギャップは公的需要で埋めないと、将来の失業者や自殺者は不可避となってしまう。

 


今回の経済対策などでは、政府による研究開発基金、環境関連グリーン基金、デジタル関連基金などの将来投資が盛り込まれた。そのほか、インフラ整備でも今絶好のチャンスである。

 

官による投資だけではなく、一層の金融緩和や設備投資減税などで民間投資を誘発できればさらにいい。

 


(ご参考) 2020/10/29 日本銀行

「当面の金融政策運営について」
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/k201029a.pdf
長期金利:・・・上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。)

 


<感想>
 事業費総額73兆円(財政支出40兆円:コロナ拡大防止策6兆円、ポストコロナ経済構造転換18兆円、国土強靭化6兆円、予備費10兆円)の総合経済対策。
 日銀が買い入れる国債を活用した、前倒しでの真水の経済対策を大いに期待している。

 

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