【 大西瀧治郎中将:特攻の真意 】
先日、「修羅の翼 零戦特攻隊員の真情」(角田和男著、光人社刊)を読んだ。
以下は、一部抜粋。
特攻の真意
「飛行長、いくら何でも桟橋にぶつかるのは残念です。空船でも良いですから、せめて輸送船に目標を変更して下さい」と、頼んでいる。
傍で聞いていると、この人の隊は、今日薄暮、タクロバンの桟橋に体当たりを命ぜられたらしかった。
間髪を入れず中島飛行長の怒声が飛んだ。
「文句を言うんじゃあない、特攻の目的は戦果にあるんじゃあない、死ぬことにあるんだ」
参謀長より、「みなは、特攻の趣旨は聞かされているだろうな」と聞かれる。私はマニラでの訓示を思い出し、「聞きましたが、良く分かりませんでした」と答えた。
「そうか、それではもう一度分かりやすく私から話そう」と、言葉を選ぶように静かに話しだした。
「皆も知っているかもしれないが、大西長官はここへ来る前は軍需省の要職におられ、日本の戦略については誰よりも一番良く知っておられる。各部長よりの報告は全部聞かれ、大臣へは必要なことだけを報告しているので、実情は大臣よりも各局長よりも一番詳しく分かっている訳である。その長官が、『もう戦争は続けるべきではない』とおっしゃる。
『一日も早く講話を結ばなければならぬ。マリアナを失った今日、敵はすでにサイパン、成都にいつでも内地を爆撃して帰れる大型爆撃機を配している。残念ながら、現在の日本の戦略ではこれを阻止することができない。それに、もう重油、ガソリンが、あと半年分しか残っていない。
動ける今のうちに講話しなければ大変なことになる。しかし、ガダルカナル以来、押され通しで、また一度も敵の反抗を喰い止めたことがない。このまま講話したのでは、いかにも情けない。一度で良いから敵をこのレイテから追い落とし、それを機会に講話に入りたい。
万一敵を本土に迎えるようなことになった場合、日本民族の再興の機会は永久に失われてしまうだろう。このためにも特攻を行ってでもフィリッピンを最後の戦場にしなければならない。
このことは大西一人の判断で考えだしたことではない。東京を出発するに際し、海軍大臣と高松宮様に状況を説明申し上げ、私の真意に対し内諾を得たものと考えている。
極めて難しい問題であるが、これは天皇陛下御自ら決められるべきことなのである。宮様や大臣や総長の進言によるものであってはならぬ』とおっしゃるのだ。
『特攻に出すには、参謀長に反対されては、いかに私でもこれはできない。他の幕僚の反対は押さえることができるが、私の参謀長だけは私の真意を理解して賛成してもらいたい。他言は絶対に無用である』
として、私だけ話されたことであるが、私は長官ほど意志が強くない。自分の教え子が(参謀長は少佐飛行隊長の頃、一時私たち飛行練習生の教官だったことがあり、私の筑波空教員の頃は連合練習航空隊選任参謀で、戦闘機操縦員に計器飛行の指導に当たられた。当時、大西少将は司令官だった)妻子まで捨てて特攻をかけてくれようとしているのに、黙り続けることはできない。長官の真意を話そう。長官は、特攻によるレイテ防衛について、
『これは、九分九厘成功の見込みはない、これが成功すると思うほど大西は馬鹿ではない。では何故見込みのないのにこのような強行をするのか、ここに信じてよいことが二つある。
一つは万世一系仁慈をもって国を統治され給う天皇陛下は、このことを聞かれたならば、必ず戦争を止めろ、と仰せられるであろうこと。
二つはその結果が仮に、いかなる形の講話になろうとも、日本民族が将に亡びんとする時に当たって、身をもってこれを防いだ若者たちがいた、という事実と、これをお聞きになって陛下御自らの御仁心によって戦を止めさせられたという歴史の残る限り、五百年後、千年後の世に、必ずや日本民族は再興するであろう、ということである。
陛下が御自らのご意思によって戦争を止めろと仰せられたならば、いかなる陸軍でも、青年将校でも、随わざるを得まい。日本民族を救う道がほかにあるであろうか。戦況は明日にでも講話をしたいところまで来ているのである。
もし、参謀長にほかに国を救う道があるならば、俺は参謀長の言うことを聞こう、なければ俺に賛成してもらいたい』
と仰っしゃった。私には策はないので同意した。これが私の聞いた長官の真意である。
<感想>
大西中将の「特攻の真意」が、海軍大臣と高松宮様の内諾の下での「陛下による戦争終結と講和」だったと信じたい。
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