元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、熱を込めて戦術で勝つ?

 

【 確率思考の戦略論:数字に熱を込める 】

 


 先日、久しぶりに森岡毅氏の「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(今西聖貴・共著、角川書店)を読み返してみた。

 

 以下は一部抜粋。(その5)

 


第4章 数字に熱を込めろ!

「熱」を込めて戦術で勝つ

 戦略がある程度正しいことは、成功するための必要条件ですが、それだけでは全く十分ではないのです。戦略だけでは決して成功しない。ビジネスにおける最終的な成功確率は、戦略と戦術の両方を合わせて決まるのです。

「戦術的勝利」がなければどれだけ優れた戦略でも絵に描いた餅で終わります。もちろん優秀な軍師がいて、勝つ確率の高い戦と正しい戦略を選べている場合は、よほどマズイ戦術でない限り勝てる場合が多いものです。しかしながら、同じ価値でも、戦術の出来具合によっては価値の度合い(戦果)に雲泥の差が生まれるのです。だから戦術が何としても大切。戦術で勝たねばなりません。


 戦略家の立場で、組織を戦術で勝たせるためにはどうするか?多岐にわたって広がる多種多様な戦術レベルの課題があります。それらを把握し、細かく指示を出して、勝ちをコントロールできるスーパーマンならば素晴らしいですが、実際には時間と気力、体力などの個人のキャパシティーがパンクしてしまします。そこで戦略家は、1)自分自身の時間をどこに集中して使えば戦果が最大化するか、2)自分以外の人々をどこにどう集中させて使えば戦果が最大化するか、この2つを冷静に考えるのです。

 槍をとったら天下無双のような豪勇の士であれば、戦術の最前線で大きな槍働きをするのが一番でしょう。しかし戦略を統率するリーダーの最も大切な仕事は、人々をより生き生きと動かすために自分の時間を集中することだと私は考えています。

 人を動かすために最前線に出ることはあっても、戦術で槍を振り回すことは目的ではないのです。しかし戦術レベルの仕事が大好きで部下の仕事のスペースを圧迫している上司は少なからずいます。それでは本末転倒です。もちろん自分がいないとどうしても勝てない重要戦局ならば、槍をとってでも最前線で戦わねばありませんが、それは戦略家本来の役割ではないのです。


 私にとって、最前線の現場を頻繁に視察して指示を出す最大の目的は、戦術の重要性を組織全体に浸透させて、戦術局面に従事する人々の士気を高めて良い仕事をしてもらうことです。私自身がどれだけ戦術を重要視しているか、私自身の勝ちへの執念、その「熱量」を現場に伝えるためです。

 もちろんマーケティングのプロとしての戦略眼で、さまざまな課題を早く理解して対処するために有効なのですが、私個人が現場に出て解決できることは実はたいしたことではないのです。私1人がどれだけ槍を振り回しても、組織全体の能力の総和に比すれば、ちっぽけな仕事量しか生み出さないことは、数学的にも自明です(笑)。だから私は人々を動かすために戦術の現場に出るのです。端的に言えば「人に良い仕事をさせる」のが私の仕事です。


 「熱」は人に伝わるのです。人々の中心に立つリーダーの圧倒的な熱量は、直接それに触れた人から、その部下や周辺へ、そしてそのまた周辺へ、拡散していきます。最初の熱源が「熱い」のと「ぬるい」のでは、組織全体の体温に決定的な差が生まれます。

 後者では組織は低体温症になり、末端では凍りついて仕事をしない(できない)人が増えていくのです。だからリーダーは戦術のど真ん中へ出向いて、彼らが達成すべき目的が何なのか、彼らの困難が何のためなのか、彼らの頑張りが組織の未来にとってどれだけ大切か、「熱」を伝えなくてはいけません。できるだけ現場の直面している困難やバリアを理解して、彼らが良い結果を出しやすいように「決めること」や、場合によっては「援軍(追加リソース)」を送り込むことが重要です。絶対に勝つのだという気迫とともに。


 人をどこかへ連れていきたい人は、誰よりも「熱」を持っていなければならないと思います。なぜならば、ビジネスにおいて1人で達成できることなど1つもないからです。USJのV字回復においても、私1人で成し遂げたことなど1つもありません。組織に属する人は皆が同じでしょう。
 多くの人を巻き込んで動かしていることでしか、大きな成果は達成できないのです。氷のような戦略の行きつく先にあるのは、できる限りのあらゆる「熱量」を注ぎ込んでいく戦術なのです。そうやって成功する確率(戦略+戦術)をできる限りギリギリまで上げてから、人事を尽くして天命を待つのです。そう、最後の最後に確率の神様のランダムの審判が待っています。

 合理的に準備して、精神的に戦うのです。この戦術面での強さ、現場の団結力、士気や規律意識の高さ、勤勉さなどは、日本人の卓越した強みだと思います。確率思考を始め戦略の合理性を増すことは、日本人の戦術面の強みをもっと活かすことに他なりません。100%は絶対にない世界で、残りの数%なり数十%なりの不確定さや想定外の困難を乗り越えていくのは、ギリギリまで戦術にこだわって確率を高めていく、戦略家本人の意志の力であり情熱の力です。それが「数字に熱を込める」ということ。

 左手には数字に裏打ちされた氷のような冷徹さを、右手には枯れることのない執念を燃やしマグマのような情熱を、それぞれ両手に備えて、ようやく困難なゴールに辿り着く、私はそう考えています。

 


<感想>
数字に熱を込めて、どこにどう集中すべきかの戦術を明確にして、組織全体で勝ち抜いてゆきたい。

 

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