【 大学入試問題で読み解く「超」世界史 】
先日、『大学入試問題で読み解く「超」世界史・日本史』(片山杜秀著、文藝春秋)を読んだ。
以下は、一部抜粋。(その4)
20世紀には、モスクワ宣言(1943年10月)で打ち出された目的を実現するための国際機構を作る試みが二度行われている。どのような国際機構が設立されたのか、またそれらはどのような問題に直面したのか、20世紀の国際関係の展開をふまえながら論じなさい。その際、次の語句を必ず用いなさい。
総力戦 安全保障理事会 イタリア 冷戦 PKO(平和維持活動)
(一橋大学 2012年度前期 世界史)
総力戦となった第一次世界大戦は多大な犠牲を生み、初の集団的安全保障体制である国際連盟を誕生させた。しかし連盟は、提案国のアメリカや当初ドイツ・ソ連も参加せず、全会一致の原則を掲げる総会も決議をあげることが困難で実行力に乏しかった。さらに世界恐慌後に日本やドイツが脱退するなか、イタリアに科した経済制裁は効果なく、ソ連も除名されたことで連盟は機能不全に陥った。
一方、第二次世界大戦後に誕生した国際連合は、安全保障理事会の機能を強化して五大国に拒否権を認め、総会も多数決とし、国連軍を認めるなど軍事制裁の権限も新たに保有した。しかし、冷戦中は米ソ両国が拒否権を多発したため軍事制裁の発動が困難になり、PKOによる停戦監視や紛争調停が重要な役割をになうようになったが、冷戦終結後に各地で内戦や地域紛争が多発すると連合の対応は遅れがちで、アメリカやNATO軍の軍事制裁に頼ることも多くなった。
ご参考)2024/2/25「ウクライナ侵攻2年、熱気欠く国連総会 決議なし、支援継続の難しさ露呈」
https://www.jiji.com/sp/article?k=2024022400400&g=int.
昨年侵攻1年の節目には、ロシア軍の即時撤退を求める総会決議を141カ国の賛成多数で採択し、ロシアを孤立させた。当時既に「ウクライナ疲れ」が指摘されていたが、日米欧が支持取り付けに奔走した結果だった。
だが、昨年10月にイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まると状況は一変。「各国の関心がパレスチナ自治区ガザに移った」(外交筋)上に、ガザで軍事作戦を続けるイスラエルを米国が拒否権を使って繰り返し擁護。米国の求心力が陰りを見せており、賛成票を減らしかねないとの判断から、今年は決議が見送られたとみられる。
トーマスグリーンフィールド米国連大使は23日の総会で「中東情勢で最善策を見いだす努力を24時間態勢で続ける」と演説。ウクライナへの連帯を呼び掛けつつも、不満を強めるアラブ諸国などに配慮を見せた。
日米欧とウクライナは23日、総会決議に代わって共同の非難声明を発表した。ただ、参加国数は50カ国超と、全193加盟国の4分の1にとどまった。
<感想>
ウクライナ侵攻2年目、国連では総会決議もできずに、加盟国の4分の1の参加国による共同非難声明に留まる。拒否権を待つ国が当事者の場合の機能不全を解消するための新たな枠組みが望まれる。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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