【 NATOの東方不拡大の「約束」】
2022/3/2、国際経済学者の細谷雄一氏が、『NATOの東方不拡大の「約束」はなかった ー最新の外交史研究の成果から』のブログを掲載された。
https://note.com/yuichihosoya/n/n778caf033b27
以下は一部抜粋。
プーチン
NATOが東方不拡大の約束をしてそれを破り、ロシアの安全が脅かされて、ほかに方法がなくやむを得ずにウクライナを攻撃したという論法
サロッティ教授(米国人外交史家)
「NATO東方不拡大の約束はない」と明言
1990年2月9日のベイカー国務長官の、ゴルバチョフ書記長とのモスクワでの会談での発言
1)ベイカーがドイツ統一のソ連による承認を得るために、色々な条件を述べた中でそのような可能性(not one inchという言葉)を示唆したということであって、具体的には北大西洋条約5条の集団防衛条項を冷戦期の分断線を越えて拡げないという提案をした
2)その後モスクワからワシントンに戻ってブッシュ大統領に報告をした際に、ブッシュ大統領はそのようなベイカーの提案は到底アメリカ政府として認められないということで、却下
実際にはそのようなベイカーの提案があくまでも米国政府の正式な提示ではなかったので、文章化もなかった
通常は外交では「約束」といった場合には、文書化して署名が必要であり、そのことはゴルバチョフも理解していたはずなので、その点では「約束」があったとは両者とも認識していない、と言及。なので、「約束は、なかった」ということに
ただこのようなベイカーの発言自体は、ロシア政府側の記録に残っていたために、1997年にクリントン大統領とエリツィン大統領がNATO東方拡大についての米ロ首脳会談をした際に、ロシア政府側から「1990年のベイカー発言」について問題提起があった
それに対してクリントン大統領は、1990年の「約束」とはあくまでもドイツ統一に関連した内容で、中東欧諸国についてではないと論じ、それをエリツィンも了解。これで、米ソ両国とも、1990年に米ソ間でNATO東方不拡大についての「約束」があったわけではないことを、確認した
ともあれ、れいわ新選組がロシアのプロパガンダを鵜呑みにしたことによって、せっかく国会で全会一致でロシアのウクライナへの軍事攻撃と、それに伴う人道的被害を批判する決議を採択できる機会を失ってしまいました。残念です。
ご参考)2022年1月31日
NATO不拡大の約束はなかった
――プーチンの神話について
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員/安全保障問題研究会会長/青山学院大学名誉教授
https://www.jfir.or.jp/studygroup_article/7401/?fbclid=IwAR2Z8IIzaA06-acPI2U3AA-gBYb9KMvsws3S13bAUWULR3giKdXl1PFJ7ZU
<感想>
ロシア(プーチン大統領)が繰り返す「NATO東方不拡大の約束」発言。
プロパガンダに踊らされることなく、事実(史実)の確認が必要だと思われる。
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