元証券マンが「あれっ」と思ったこと

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あれっ、賠償金額の責任制限条項?

 

【 賠償金額:責任制限条項 】

 


 2023/5/17、日経クロステック/日経NETWORKのWebサイトに、『Z会システム開発裁判勝訴も、日立子会社から「11億円しか」賠償されないワケ』が掲載された。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/051501283/?n_cid=nbpnxt_mled_chm

 以下は一部抜粋。

 

 

賠償責任は契約金額まで

 責任制限条項とは契約において受託側の損害賠償責任の上限を定めると共に、責任の発生条件を限定する条項のことである。免責条項、責任限定条項とも呼ぶ。システム開発訴訟に詳しいSTORIA法律事務所の杉浦健二弁護士は同条項について「法的知識のあるベンダーであれば、自社の責任を制限する目的で、責任制限条項を契約に盛り込んでいることが多い」という。

 

 Z会とHISOL(日立ソリューションズ)の契約にも責任制限条項に当たる記述があり、賠償金額の上限はサービスの契約金額であると定められていた。契約金額に基づいたZ会の請求分は20億2124万4400円となり、裁判所が最終的にシステム障害との関連を認めた個別契約の合計額が11億円であった。

 


 責任制限条項を定めるに当たっては、受託側にどのような過失があった場合に損害賠償を求められるかが重要だ。具体的には「過失なし」「軽過失」「重過失」「故意」の4種類に分類できる。受託側に重過失や故意、つまり悪質性が認められた場合でさえも賠償しなかったり、賠償の上限金額を著しく低く設定したりしているような責任制限条項は「契約に盛り込んだとしても、係争時に裁判所が認めない可能性がある」(杉浦氏)という。

 

 Z会とHISOLの個別契約には「乙の責めに帰すべき事由による債務不履行に起因して甲が損害を被った場合」(甲はZ会、乙はHISOL)の賠償金額について、「サービス料金相当額」を上限に定める責任制限条項があった。Z会側はこの「乙の責めに帰すべき事由」に悪質性があったため、責任制限条項を適用すべきでないと主張した。これにより、契約金額以上の賠償を請求したわけだ。

 

 だがZ会代理人弁護士である西村あさひ法律事務所の矢嶋雅子氏も、2023年2月の日経クロステックの取材に対し「システム開発訴訟において、責任制限条項を超える(賠償責任を裁判所に認めさせる)のはハードルが高い」としたように、裁判所はHISOLの悪質性を認めなかった。Z会は最終的に緊急対応費用の請求ができなかった。

 


<感想>
 本件は、債務不履行時に、重過失や故意の過失(悪質性)がなかったとして、賠償金額が設定した責任制限条項の上限金額に減額されたもの。
 裁判所に、重過失や故意の悪質性を認めされることが難しい事例だったものと思われる。

 

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