元証券マンが「あれっ」と思ったこと

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あれっ、恒大集団の米国破産申請の狙い?

 

【 恒大集団の破産申請 】


 2023/8/21、現代ビジネスに、高橋洋一さんが、『あまりにも闇が深い…中国「恒大集団の破産申請」本当の狙い 中国ならではの「事情」』を掲載された。
https://gendai.media/articles/-/115106?imp=0

 以下は、一部抜粋。

 


中国恒大集団が米国で連邦破産法第15条の適用を申請した。問題の背景と、中国本国を中心とした世界経済への影響の有無はどうか。

連邦破産法15条は外国企業に適用されるが、外国企業が債権者の差し押さえなどから米国内の資産を保護するために申請する。恒大集団は2021年12月にドル建て債の債務不履行(デフォルト)に陥っているので、この申請には意外感はない。

 


中国恒大集団は形式的にはケイマン島法人で香港市場に上場されている。そのバランスシートをみると、2021年12月末、2022年12月末のそれぞれで、資産2.1兆円元(42兆円)負債2.6兆元(52兆円)で0.5兆元(10兆円)の債務超過、資産1.8兆元(36兆円)負債2.4兆元(48兆円)で0.6兆元(12兆円)の債務超過だ。

 


先進国の常識なら表面化した財務諸表上債務超過なら、既に自国において破産申し立てがあり、裁判所が破産認定をしているはずだ。例えば、リーマン・ショックとは、多額の損失を計上したリーマン・ブラザーズが米連邦破産法第11条の適用を申請し、2008年9月15日に破産している。

 


先進国であれば、きちんとした会計制度があり、その下で債務超過であれば破産申請をすれば裁判所はほぼ認める。しかし、中国でも形式的には破産法制は存在するが、まずきちんとした会計制度がないし、仮に破産申請しても裁判所に広範な裁量があり、破産申請が受理されることは少ない。

 


筆者の見立てでは、恒大集団は外貨建て再編計画を有利に運ぶために、米国破産法15条の申請をしたのではないだろうか。

 


中国のシャドーバンキングは大きく分けて二種類ある。銀行がある企業に資金を貸し付け、銀行は資金需要者にその企業を紹介し、資金需要者はその企業から高い金利で資金を直接借り入れる「委託融資」と、貸出債権を小口化した「理財商品」で資金を集めて、資金需要者はそこから資金を調達するケースがある。

 

どちらも、資金需要者には地方政府が傘下に抱える投資会社「融資平台」が多い。融資平台は、調達した資金を地方政府の指示に沿って道路建設やダム工事などのインフラ開発に使っている。そこに、地方の「隠れ借金」があり、それが不良債権化しているという指摘がある。

 

IMFもこの問題を指摘しているが、地方融資平台の債務残高すら正確な数字はわからない。今年2月の4条対中審査において、2023年における中央政府、地方政府、地方融資平台の債務は、それぞれ29兆元(580兆円、対GDP比23%)、40兆元(800兆円、対GDP比32%)、66兆元(1320兆円、対GDP比53%)、政府ファンド16兆元(320兆円、対GDP比13%)と推計されている。政府系債務は151兆元(3020兆円、対GDP比121%)にもなる。

 


IMFによると不良債権問題での平均的な生産損失はGDPの14%であるが、中国の場合、不動産関連取り引き比率が高いので、GDPに対する影響はもっと大きくなるだろう。

 


世界経済への影響も気になるところだが、安全保障上の関係から、中国との貿易や資本取引はデリスキングが進んでいる。そのため、かつてのように貿易で中国とべったりの関係だった時により、わずかに影響は少ないだろう。デリスキングが進んでいる企業や国ほど影響が軽微になるはずだ。

 


<感想>
中国恒大集団が米国破産法15条を申請した。
中国へのデリスキングが進んでいない企業や国への影響がとても気になる。

 

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