元証券マンが「あれっ」と思ったこと

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あれっ、母に捧げた8年半ぶりのアルバム?


宇多田ヒカル:8年半ぶりのアルバム Fantome 】

 


 2013/8/22に、宇多田ヒカルの母、藤圭子が逝去されて10年。

 

 以下は、「宇多田ヒカル論 世界の無限と交わる歌」(杉田俊介著、毎日新聞出版)からの一部抜粋。

 


第六章 幽霊的な友愛のほうへ

 母の死と向き合う-『Fantome』

 

 2016年9月28日。8年半ぶりのアルバム『Fantome』が発売される。 「Fantome」とは、「幻」や「気配」を意味するフランス語だという。母国語である日本語でも英語でもなく、フランス語を使うことが妙にしっくりきたという。

 

 <<今回のアルバムは亡くなった母に捧げたいと思っていたので、輪廻という視点から“気配”という言葉に向かいました。

 一時期は、何を目にしても母が見えてしまい、息子の笑顔を見ても悲しくなる時がありました。

 でもこのアルバムを作る過程で、ぐちゃぐちゃだった気持ちがだんだんと整理されていって。

「母の存在を気配として感じるのであれば、それでいいんだ。

 私という存在は母から始まったんだから」と。 >>

(「私という存在は母から始まったんだから 宇多田ヒカル、待望のニューアルバム『Fantome』をリリース」、『トレンドニュース GYAO!』2016年9月2日配信)

 

 これは本人による解説としてわかりやすいし、家族問題としては第三者の私たちの感覚としても納得がしやすい。

 

 2012年に発表された「桜流し」は別として、アルバム収録曲の中ではまず「真夏の通り雨」を作り、次に「花束を君に」を作ったそうである。

 

 これらの曲を作るのは、とても苦労したという。特に歌詞の面で難航した。いくつかのキーワードがぽつりぽつりと浮かんでも、題材がデリケートなだけに、なかなか完成してくれなかった。母の死後には、もう二度と音楽を作れないかもしれない、そんな覚悟をしていた時期もあったという。

 

 現在の宇多田はすでにとまどわず、何も臆することなく、『Fantome』というアルバムには自らを癒すためのセラピー的な側面があった、そう語っている。それを真っ直ぐに公然と語りうるところまで、自分をもってきた。

 

 母の生前は、いろいろなことを公にできず、「秘密」を抱え、自分を制限してきた面もあった。けれども、母の死とともに、内なる「センサーシップ(=検閲)」のようなものが解除された。それはもう恐れるものが何もない、という場所へと自分を開くことだった。母をめぐる「秘密」を公然とお天道様の下にさらすことだった。「全部裸になっちゃった、どうしよう」。

 

 そしていざ、そのことに気づいてみると、想像以上に、自分は「自由」だった。自由になってしまっていた。これほど、みんなに聞いてほしい、と素直に感じたアルバムは、これが初めてかもしれない、そうも言っている。

 

 「桜流し」「真夏の通り雨」「花束を君に」以外の、今回のアルバム収録曲の歌詞のほとんどは、2016年の4月から7月までの約3ヶ月の間に一気に書き上げた。これまでで最短記録だった。

 

 母の死は、自分に「自由」をもたらした。母を亡くしたこと、また再婚して男の子を産んで、自らが母親になったことで、急激に「大人」になった。大人にならざるをえなかった。宇多田は、そうも言っている。逆に言えば、どんなに成長し、成熟したとしても、彼女はそれ以前はまだまだ母の「娘」であり、母なるものの呪縛の中にあった。そういうことだろう。

 


ご参考1)再始動の1曲目となった「真夏の通り雨」の一節

「汗ばんだ私をそっと抱き寄せて たくさんの初めてを深く刻んだ」

 

ご参考2)宇多田ヒカル前川清はどんな関係?「今会いたい人」と発表した思惑は
https://mashikong.com/archives/3348

 


<感想>
 母にたくさんの初めてを教えられたこと。母になって子供を育てること。その積み重ね(輪廻)により新たな宇多田ヒカルが輝き始めた。
 「真夏の通り雨」は、亡くなった母への想いが強く感じられるアルバム(Fantome)最良の曲だと思う。

 

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