元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、資本市場の整備が喫緊の課題?

 

【 資産運用に関するタスクフォース 】

 


 2023/10/3の金融審議会「資産運用に関するタスクフォース」(第1回)議事録が、公表された。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sisan-unyo/gijiroku/20231003.html

 

 以下は、ブラックロックの有田氏のコメントの一部抜粋。

 


【有田委員】
 ブラックロックの有田と申します。私からは、資産運用に関する概観について、20年来の考え方を御紹介させていただきまして、続いて、運用対象の多様化についてコメントしたいと思います。

 

 いきなり大上段で誠に恐縮ですが、戦後、我が国の高度成長を支えたのは、雁行形態論に基づく、いわゆる傾斜生産方式でありました。それを金融面で支えたのが、預金と貸出を業とする銀行を中心とした間接金融の仕組みだったと思います。その世界では貯蓄が美しいとされ、政府と産業界、金融界は一体となって、なけなしの国民の資金を、軽工業から重厚長大な産業に配分してまいりました。

 

 この開発経済のモデルでは、いわゆるライアビリティーマネジメントこそ重要でありまして、企業はどのように負債を確保できるか、それさえできれば国内に事業を起こすことができたわけです。

 

 80年代後半以降、経済が成熟しまして、生産要素の比較優位が発展途上国にシフトする中で、国内での資金需要が細ったわけです。行き場を失った預金はバブルを生じさせ、その後、バランスシートの修復に伴うデフレの世界に突入していったというふうに考えております。

 

 この間、積み上がる経常収支の黒字により、資本市場の需給は資金の供給過多ということになりまして、その過剰流動性をどのように海外資産で運用するかが、国富の継承に関わる問題となりました。ここでアセットマネジメント、なかんずく国内の余剰資金をいかに海外で、海外資産で運用するかが国民経済にとって重要になったわけです。

 

 さて、私は足元、さらに大きな転換期が訪れていると考えています。世界の情勢は大きく変化しています。地政学リスクが強く意識され、多少効率が悪くても、垂直分業的なサプライチェーンの再構築が行われています。また、脱炭素化に向けたトランジションファイナンスで、国内設備投資の増大が見込まれています。また、日本の地道な技術開発力が、世界から再注目されているというふうに感じております。

 

 先ほど申し上げましたように、数年前までは日本の資金を海外資産で運用し、その配当や金利で国内を豊かにするということが重要であると考えておりましたが、現在ではこうした様々な世界情勢の変化の中で、国内の増大する資金需要を、従来型の間接金融に加えて、資産運用会社を通じた直接金融でファンディングする必要がある。その過程では、グローバルな投資家から、日本国内への投資を惹起することも必要だと考えるようになりました。

 

 そのためには、幾つか課題があると思います。まずは金融のプロバイダーとして、資産運用業界をどのように高度化していくのか。また、資金の受け手としての産業界のさらなる活性化、そして、その2つを結びつける資本市場の整備、これらが喫緊の課題であると認識しております。

 


まとめ
高度成長期
:預金と貸出を業とする銀行を中心とした間接金融の仕組み。なけなしの国民の資金を、軽工業から重厚長大な産業に配分。ライアビリティーマネジメントこそ重要(企業はどのように負債を確保できるか)

 

80年代後半以降:経済が成熟し、生産要素の比較優位が発展途上国にシフトする中で、国内での資金需要が細った。行き場を失った預金はバブルを生じさせ、その後、バランスシートの修復に伴うデフレの世界に突入。この間、積み上がる経常収支の黒字により、国内の余剰資金をいかに海外資産で運用するかが重要

 

足元(大きな転換期)地政学リスクが強く意識され、多少効率が悪くても、垂直分業的なサプライチェーンを再構築。脱炭素化に向けた国内設備投資が増大。日本の地道な技術開発力が、世界から再注目。国内の増大する資金需要を、従来型の間接金融に加えて、資産運用会社を通じた直接金融でファンディングする必要がある(グローバルな投資家から、日本国内への投資を惹起することも必要)

 


<感想>
国内回帰の資金の受け手と資産運用業界の高度化を結びつける「資本市場の整備を通じた産業界の活性化」に、大いに期待している。

 

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