元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、極めて合理的な最高裁判決?

 

最高裁判決:合理的理由による非画一的評価 】

 


 前日に続いて、国税庁長官の指示に基づいた価額を是認した「最高裁判決」からの 一部抜粋。(その1)
091105_hanrei.pdf (http://courts.go.jp)

 


1.被相続人の相続財産に含まれるに至った経緯
(1) 2009/1/30

信託銀行から6億3000万円を借入 ⇒ 甲不動産を8億3700万円で購入

 

(2) 2009/12/21
共同相続人から4700万円、同25日信託銀行から3億7800万円を借入 ⇒ 乙不動産を5億5000万円で購入

 


2.最高裁見解
本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて企画して実行したもので、本件購入・借入れがなかったとすれば、本件相続に係る相続税の課税 価格の合計額は6億円を超えるものであった

 


3.更正処分及び賦課決定処分の経緯
(1) 2013/3/11

札幌南税務署長宛て、課税価格の合計額は2826万1000円、相続税の総額は0円(基礎控除後)の相続税申告書を提出(価額:甲不動産2億4万1474円、乙不動産1億3366万4767円)

 

(2) 2016/3/10
国税庁長官は、札幌国税局長に対し、評価通達6の他の合理的な方法によって評価することを指示

 


4.評価通達6
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01/01.htm


(この通達の定めにより難い場合の評価)
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

 

2016/4/27:札幌南税務署長は、不動産鑑定士が算定した鑑定評価額に基づき、不動産価額:甲7億5400万円、乙5億 1900万円(併せて「本件各鑑定評価額」)を前提とする更正処分(本件相続に係る課税価格の合計額を8億 8874万9000円、相続税の総額を2億4049万8600円とするもの)及び賦課決定処分をした

 


5.原審
不動産の価額については、評価通達の定める方法により評価すると実質的な租税負担の公平を著しく害し不当な結果を招来すると認められるから、他の合理的な方法によって評価することが許されると判断した上で、本件各鑑定評価額は本件各不動産の客観的な交換価値としての時価であると認められるからこれを基礎とする本件各更正処分は適法であり、これを前提とする本件各賦課決定処分も適法であるとした。 所論は、原審の上記判断には相続税法22条等の法令の解釈適用を誤った違法があるというもの

 


6.相続税法22条
相続等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価によるとするが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。評価通達は、上記の意味における時価の評価方法を定めたものであるが、上級行政機関が下級行政機関の職務権限の行使を指揮するために発した通達にすぎず、これが国民に対し直接の法的効力を有するというべき根拠は見当たらない。

 

相続税の課税価格に算入される財産の価額は、当該財産の取得の時における客観的な交換価値としての時価を上回らない限り、同条に違反するものではなく、このことは、当該価額が評価通達の定める方法により評価した価額を上回るか否かによって左右されないというべきである。 本件各更正処分に係る課税価格に算入された本件各鑑定評価額は、本件各不動産の客観的な交換価値としての時価であると認められるというのであるから、これが本件各通達評価額を上回るからといって、相続税法22条に違反するものということはできない

 

(評価の原則)
第二十二条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

 


7.租税法上の一般原則としての平等原則
租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることを要求するものと解される。 評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。

 

上記に述べたところに照らせば、相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。

 

これを本件各不動産についてみると、本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。

 


<感想>
1.評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたもの(画一的評価)であり、
2.特定の者の相続財産の価額が評価通達の定める価額を上回っても、(画一的評価が逆に「租税負担の公平」に反する)合理的な理由があれば適法である、
とした「最高裁判決」は極めて合理的であると言えそうだ。

 

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