【 能力伴う多様性の確保へ 企業統治の課題 】
10月6日の日経新聞「経済教室」に、興味深い添付記事が掲載されていた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD2647W0W3A920C2000000/
以下は一部抜粋。
2023/10/6
能力伴う多様性の確保へ 企業統治の課題
松田千恵子・東京都立大学教授 #経済教室
ポイント
○日本の取締役会は機能見直しが必須条件
○経営戦略がシナリオ化されず管理不能に
○人的資本改革は経営人材の多様性を核に
・各社のコーポレートガバナンス(企業統治)を巡る動き:先進企業とそうではない企業の取り組みの差が開いてきた
・その違いは、経営における意思決定のありかたや経営人材に対する考え方など、自社のマネジメント変革へと昇華できているかどうかにかかっているようだ
外部環境の変化:2023年に入り、コーポレートガバナンスの実質化が強く求められるようになってきた
・東証:「資本コストや株価を意識した経営」の要請
・金融庁(フォローアップ会議)【アクション・プログラム】:
(1)資本コストを踏まえた収益性・成長性
(2)人的資本を含むサステナビリティー(持続可能性)課題への取り組み
(3)独立社外取締役の機能発揮――などを企業に要請
独立社外取締役:コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の「独立かつ客観的な経営の監督の実効性」(原則4-2)を担う存在ながら、全体として十分に機能を発揮しているとは言い難い(啓発活動などの強化に加え、独立社外取締役の評価も避けては通れないだろう)
投資家との直接対話の機会:筆者らの研究では、6割以上の企業が独立社外取締役の負担を理由に、設けていなかった(「監督」機能としての説明責任を果たすことも期待される)
【アクション・プログラム】(1)(2):より実質的な企業内部における「執行」を問うている
執行における意思決定のありかたを、監督機能を前提とした仕様にバージョンアップさせる必要がある(←取締役会の機能の見直しが不可欠)
プランニングからモニタリングに至るマネジメントサイクル:機能として最も重要(プランニングがなければモニタリングはできない)
監督側が最重要視するプランニング:企業理念と、それを具体化するにあたっての経営戦略の確立
取締役会で経営戦略を議論する時間:全体の2割にすぎないというデータがある(取締役会の「最も重要な役割・責務」(原則4-1)を果たすには不足)
経営戦略:サステナビリティーの要素を統合することは今や必須条件だが、実効性ある議論は少ない
・筆者らの研究からは、企業内ではいまだに社会的責任や倫理・道義的な問題と位置付けられ、将来に向けた成長機会やリスク・リターンとのつながりを期待する投資家との認識ギャップがうかがえる
・経営戦略が十分に議論されたとしても、それがリスクマネジメントと連携していないと、モニタリングは困難になる(基本線として示された経営戦略が、経営に深刻な影響を与えるほど下振れするリスクについては十分な認識と議論が必要)
・内部統制や内部監査といった、「執行」側にモニタリングを依拠している分野も同様である(これらについても取締役会における議論は少ない)
⇒ さらにモニタリングを困難にするのが、経営戦略がシナリオとして定量化されず、目標や指標が曖昧であること
<感想>
リスクマネジメントと連携した「経営戦略」のプランニングからモニタリングまで、もっと取締役会で議論される必要がある、という松田教授の指摘は、その通りだと思う。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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