元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、TOB対抗策としての新株予約権の無償割当?

東芝機械:村上ファンド系からのTOBへの対抗策 】


 以下は、オフィスサポートの東芝機械(6104)株式の株式公開買付け(TOB)に関する内容等。


1.2020/1/17
東芝機械:「株式会社オフィスサポートからの当社株式を対象とするTOBの予告を受けた当社の対応方針に関するお知らせ」
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120200117447931.pdf

< 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針 >
2007/6/26開催の第84回定時株主総会の決議により承認を得て、「当社株式の大量買付行為に関する対応方針(買収防衛策)」(「旧プラン」)を導入

1)2010年、2013年及び2016年の定時株主総会で旧プランを更新

2)2019年の定時株主総会で旧プランを継続せず、廃止


< 当社と(関連会社含む)オフィスサポートとのやりとり経緯、等 >
https://www.toshiba-machine.co.jp/jp/ir/officesupport.html

株券等保有割合の推移
2019/6/21
オフィスサポート+野村絢氏=6.66%

2019/11/29
上記+エスグラントコーポレーション=9.19%

(現状:当社の総議決権の約11.49%に相当する当社株式を保有)

TOBの通知等
2020/1/10
オフィスサポートから書面により、同社による当社株式に対する公開買付け(TOB)の実施可能性について通知を受ける

1/13
TOBを1月21日に公表し、翌22日から開始する予定である旨の連絡を受ける

1/16
オフィスサポートから、 同社の子会社を公開買付者とするTOBにつき、1月20日に公表し、翌21日から開始する旨の連絡を受ける


< 大規模買付行為等への対応 >
オフィスサポートが、TOBについて当社との間で何ら実質的な協議を行うことなく、当社にほとんど情報共有がなされておらず、また、TOB実施後の当社の経営方針等についても一切の説明がないことや、オフィスサポート、同社に強い影響力を有している村上世彰氏や同氏の影響下にあるファンド等の過去の投資活動の経緯及びその結果等に鑑みると、TOBの目的ないしその結果が、当社の企業価値ないし株主の皆様共同の利益の最大化を妨げるおそれは否定できないものと認識している

かかる認識の下、大規模買付行為等が企図されるに至る場合には、当社の企業価値ないし株主の共同の利益の最大化を妨げる事態が生じないよう、大規模買付行為等が当社の企業価値やその価値の源泉に対してどのような影響を及ぼし得るかについて、株主が適切な判断を下すための情報と時間を確保するため、かかる大規模買付行為等は、当社取締役会の定める一定の手続に基づいてなされる必要があるとの結論に至った

その結果、当社取締役会は、不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み(「本対応方針」)を導入することを決議した

本対応方針は、既に具体化しているTOBを含む大規模買付行為への対応を主たる目的として導入されるもの。 なお、当社取締役会による恣意的な判断を防止等を目的として、当社の独立社外取締役3名からなる独立委員会を設置した

株主総会決議等株主の明示的な判断に基づくものでないことに鑑み、本対応方針に基づく対抗措置(具体的には新株予約権の無償割当て)は、

(a)株主総会(「株主意思確認総会」)による承認、かつ、大規模買付者が大規模買付行為等を撤回しない場合、又は、

(b)大規模買付者が定められた手続を遵守せず、株主意思確認総会を開催する以前において大規模買付行為等を実行しようとする場合にのみ、

独立委員会による勧告を最大限尊重して発動される

なお、本対応方針の導入は、当社の独立社外取締役6名全員を含む取締役の全員が賛成している


2.2020/1/21
(1)「*シティインデックスイレブンスによる東芝機械株券に対するTOBの開始に関するお知らせ」*オフィスサポートの子会社
https://www.toshiba-machine.co.jp/documents/jp/ir/library/kohyo/2020/20200121_2.pdf

TOB期間:2020/1/21〜3/4(30営業日)
TOB価格:金3,456円/株
買付予定数:7,500,000株。下限3,500,000株

< 対象者の買収防衛策が許された場合の影響 >
株主総会で株主の意思を確認しないまま、買収防衛策を発動できることが容認されれば、取締役の保身の邪魔になる大株主の保有割合を、取締役会決議のみで買収防衛策の発動名目で大幅に低下させることが可能になってしまう

2019年の事例であれば、伊藤忠商事がデサン トのTOBを行った際や、HIS やブラックストーンがユニゾHDをTOBしようとした際、あるいはヤフーがアスクルの取締役を解任し新たな取締役を選任しようとした際に、投資家によるTOBや役員の解任に反対する場合、株主の意思を確認せずとも、取締役会決議で買収防衛策を導入し、伊藤忠商事、HIS、ブラックストーン、ヤフーだけが行使できない新株予約権を株主に無償で割り当てることにより、買付けを断念させたり、株主総会での議決権を大きく低下させたりするということができることになる

デサント、ユニゾHDそしてアスクルの経営陣は、そのようなコーポレート・ガバナンスを無視した暴挙に出ることはなかったが、株主総会の承認も得ずに設定した対象者の買収防衛策は、 株主による会社のガバナンスを完全に無視した、経営陣の保身のための暴挙以外の何物でもない


(2)東芝機械:「シティインデックスイレブンスによる当社株式に対するTOBに関するお知らせ」
https://www.toshiba-machine.co.jp/documents/jp/ir/library/kohyo/2020/20200121_1.pdf

本対応方針の規定する「大規模買付行為等」が行われる場合に、それが当社の企業価値等に対してどのような影響を及ぼし得るかについて、株主が適切な判断を下すための情報と時間を確保することを目的とするものであるところ、本TOBは、本対応方針に規定する手続の一切を無視し、株主の適切な判断の機会を奪うものであり、 誠に遺憾であると考えている


3.株価終値(円)
1/6 2,905、1/16 3,090、1/17 3,115 
1/20 3,705 1/21 3,350、1/22 3,385


4.臨時株主総会の開催要求
1/22 日経新電子版記事
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54696900S0A120C2000000/

 

 

<感想>
 本件は、村上ファンド系からのTOBへの対抗のために、東芝機械が新株予約権の無償割当を企図した事例。
 株主総会を経ない、取締役会決議のみでの新株予約権の発行の差止請求は認められる可能性が高いものと思われる。
 TOBの下限株数を上回る応募があるのか、今後の動向を注視して行きたい。

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