元証券マンが「あれっ」と思ったこと

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あれっ、ナイチンゲールは統計学者?


統計学者としてのナイチンゲール

 


 先日、表題に惹かれて、「中高生のための文章読本」(澤田英輔・仲島ひとみ・森大徳 編、筑摩書房)を読んだ。
 以下は、一部抜粋。

 


ナイチンゲール統計学 瀧本哲史

 

ナイチンゲールが暴いた「戦争の真実」 

 

ちょうどそのころイギリスは、ロシアとオスマン帝国(トルコ)のあいだで勃発した、クリミア戦争に巻き込まれてしまいました。

 

そして戦地では、医師や看護師が極端に不足していました。負傷した兵士たちの包帯を換える人間さえ、足りないほどでした。新聞でそのことを知ったナイチンゲールは、すぐさま行動にでます。ぜひ戦地におもむいて兵士たちの看護にあたりたいと、戦時大臣に手紙を送ったのです。

 


のちに彼女は、「看護の仕事は、わたしが果たさねばならない仕事のなかで、もっとも重要度の低いものだった」と振り返っています。

 


戦場の兵士たちは、戦闘によって亡くなるのではなく、劣悪な環境での感染症によって亡くなっていくのだ。それがナイチンゲールの結論でした。

 


そこでナイチンゲールが使った武器が、看護師の道に進む以前、ずっと学んできた数学であり、統計学だったのです。

 

最初にナイチンゲールは、クリミア戦争における戦死者たちの死因を「感染症」と「負傷」、それから「その他」の三つに分類し、それぞれの数を月別に集計していきました。

 

その結果、たとえば1855年1月の場合、感染症による死者が2761人、負傷による死者が83人、その他の死者が324人となっています。つまり、負傷を原因とする死者の30倍以上もの兵士たちが、感染症によって亡くなっていたのです。

 

しかも彼女は、戦死者の数を集計しただけではありません。

 


たくさんの人にこの事実を知ってもらおう、理解してもらおうと、まったくオリジナルのグラフをつくったのです。

 


こうしてナイチンゲールは、ヴィクトリア女王が直轄する委員会に1000ページ近くにもおよび報告書を提出します。どんな権力者であろうと反論できない、客観的な「事実」を突きつけたわけです。

 

その結果、戦場や市民生活における衛生管理の重要性が知れ渡り、看護師という仕事が再評価され、感染症の予防にも大きく貢献していくことになりました。

 


もし、彼女が数学や統計学の素養をもたない、善良なだけの看護師だったなら、目の前の患者を助けることに精いっぱいで、医療態勢や衛生管理の構造的な欠陥に気づくこともなかったかもしれません。また、仮に気づいたとしても、それを裏づけるデータがなければ彼女の意見に耳を貸す人はいなかったはずです。

 

戦場の兵士たちを救い、不衛生な環境に暮らす人々を救い、イギリスはもとより世界の医療・福祉制度を大きく変えていったのは、看護師としてのナイチンゲールではなく、統計学者としてのナイチンゲールだったのです。

 


<感想>
 ナイチンゲールが突きつけた、数学と統計学を活用した、客観的な「事実」。
 これは現代のビジネスにも必要な知識と知恵であるに違いない。

 

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