元証券マンが「あれっ」と思ったこと

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あれっ、算出方法見直しで受給ギャップがプラス?


需給ギャップ:潜在GDPの算出方法の見直し 】

 


 2023/9/18、高橋洋一氏が、現代ビジネスに、『岸田首相肝入りの内閣改造も支持率は上がらず…大事なのは15兆円「真水の」経済対策だ』を掲載された。
https://gendai.media/articles/-/116359?page=5

 以下は、一部抜粋。

 


真水15兆円の対策を活用できるか

 

内閣府は1日、4-6月期の需給ギャップの推計は、前期比1.3ポイント上昇のプラス0.4%だったと発表した。需要不足は2019年7-9月期以来、15四半期(3年9カ月)ぶりに需要が供給力を上回ったとした。

 

コロナ前のピーク2019年7-9月期557.4兆円であるが、今4-6月期560.7兆円。それぞれの需給ギャップは1.2%、0.4%。それぞれの潜在GDPを算出すると、550.8兆円、558.4兆円。ただし、2019年7-9月期当時は需給ギャップは0.3%と公表されていた。

 

それから潜在GDPを算出すると、555.7兆円と今より5兆円大きかった。種明かしをすると、内閣府は今年1-3月期に潜在GDPの計算方法を直して潜在GDPを低くしたのだ。

 

筆者も独自にGDPギャップを算出しているが、筆者は失業率がほぼ下限とされる2%半ばを達成する時にGDPギャップがないとして算出しているので、潜在GDPはかつての内閣府試算より2%程度高めになっている。

 

内閣府で潜在GDPをさらに1%程度低めたので、筆者のGDPギャップとは3%程度の差があることになる。潜在GDPは技術進歩分は一定程度時ともに上昇するので、これらを考慮すると、需給ギャップはマイナス3%(15兆円)程度あると筆者はみており、とても需要不足は解消したとは言いがたい。

 

この点を雇用関係のデータから検証してみよう。雇用は景気に対して遅行指数、つまりGDP動向の後を追って動く経済指標である。

 

有効求人倍率(季節調整値)でみると、7月は1.29倍、3ヶ月連続で減少だ。もし4-6月期で需要不足が解消されているなら、有効求人倍率が3ヶ月連続で減少するはずない。しかも、コロナ前の1.6倍よりかなり低い水準なので、明らかに需要不足は解消されていないことを示している。

 

失業率(季節調整値)でみても、7月は2.7%と4-6月より上昇している。これも、需要不足が解消されていないという筆者の説明と整合性が取れている。

 

要するに、内閣府は、潜在GDPの一定の伸びをカウントせずに、さらに計算方法の見直しで水準そのものを引き下げ、需要不足が解消されたかのような需要ギャップの数字を作ったといえる。

 

つまり、真の需給ギャップはマイナス3%(15兆円)程度ある。この見方からいえば、マクロ経済的に必要な経済対策は、需給ギャップを埋める真水15兆円対策だ。

 

そうすれば、民間需要がでてくるので、公的需要ですべてを埋める必要はない。もっとも、民間需要をどれだけ誘発できるかは不確定な要素が大きいので、安全サイドにたてば需給ギャップ景気対策規模の目途にした方がいい。

 

その内容については、マクロ経済から見れば何でもいい。ミクロ経済からみて、時の政権が重視するところに財政を充てればいい。

 

岸田首相は、今回の改造を「変化を力にする内閣だ」とも語った。具体的な分野としては、ガソリン対策、災害対策、150兆円規模のGX投資、異次元少子化対策などを上げた。

 

今回の改造では、財務相経産相国交相官房長官が留任した。具体的な分野のほとんどで留任閣僚なので、改造の顔ぶれの変化はあまりないだろう。

あとは、岸田首相が15兆円規模の対策を指示できるかどうかだ。対策全体の規模はまさに首相の判断が大きい。木原氏の後任で新たに副長官となった同じ財務省出身の村井氏がどのようにアドバイスするかも注目だ。緊縮路線なのか、積極路線なのか、財務省色がどの程度なのかもわかるだろう。

 


<感想>
内閣府の4-6月期の需給ギャップの推計(前期比1.3ポイント上昇の+0.4%)は、潜在GDPの計算方法を直して潜在GDPを低くした結果だという。
高橋氏の試算によれば、需給ギャップは△3%(15兆円)程度あるため、岸田首相には15超円規模の真水の経済対策を期待したい。

 

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