元証券マンが「あれっ」と思ったこと

元証券マンが「あれっ」と思ったことをたまに書きます。

あれっ、半導体産業に対する経産省の思い?

 

【 日本の半導体復活への狼煙 】

 


 2024/3/18、 JSRが、「JICC-02株式会社による当社株式等に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨に関するお知らせ」を発表した。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4185/tdnet/2411273/00.pdf

 

 以下は、2024/3/8の「日本がなぜ半導体経産省のキーパーソン、野原局長が疑問にとことん回答」からの一部抜粋。
https://journal.meti.go.jp/p/32586/

 


強力支援に3つの理由。半導体は国民生活を守り、GXに貢献する成長産業

 

――― 政府が半導体産業を強力に後押しているのは、どういう狙いからでしょうか。

 

野原 主に3つの理由があります。

 

1点目は、半導体の安定供給を確保することがきわめて重要だからです。コロナ禍では半導体不足が顕著になりました。産業のサプライチェーンは停滞し、製品の供給に悪影響が出たため、国民生活にご不便をおかけしました。国民生活や日本経済を守るには、半導体の安定供給を図らなければなりません。

 

2点目は、GX(グリーントランスフォーメーション)、あるいは、カーボンニュートラルの関係です。生成AIの登場などデジタル技術の発達に伴い、データの使用量が爆発的に拡大し、電力消費量が大きく伸びることが見込まれています。電力供給量の増加だけで対応することは困難な状況です。テクノロジーの力で、電力消費をサステナブルな水準に抑える必要があります。

・・・実現すれば、電力消費を約100分の1に抑えることができるのです。

 

3点目は、半導体が成長産業であるからです。少し前には、半導体市場は今後10年間で50兆円から100兆円へと2倍に拡大すると認識していましたが、AIの発展によって、150兆円近くなるという見方も出ています。これだけ成長する産業を自国の基幹産業として持つことには大きな意義があります。日本だけでなく、各国がそれを目指して競っているところです。

 


ニッポン半導体産業凋落の原因を5つに整理。「過去の政策の反省の上に立ち挑戦」

 

1つは、半導体摩擦ではアメリカから批判を受けたこともあって、産業政策を後退させたことです。これは、経済産業省の政策全般についても言えます。

 

2番目は、ビジネスサイドの問題として、ファウンドリーというビジネスモデルの転換に、総合電機メーカーを中心とする日本企業がついていけませんでした※。

ファウンドリーとは半導体チップの設計を自前で行わず、他社が設計した半導体の製造の専門に特化するビジネスモデル。日本の総合電機メーカーは設計から生産までを一貫して手掛けていた。

 

3番目に、日の丸自前主義とも言われますが、政府が支援するのだから、対象を日本企業に集中すべきという考え方です。アライアンスを組んでいる日本企業の中に、国際的に競争力が乏しい企業が含まれていると、全体としては競争力がないということが見られました。最終的に勝ち残らなければ、財政資金が無駄になってしまいます。

 

4番目として、バブル経済の崩壊以降に民間投資が後退していく中、政府としての支援が十分ではありませんでした。他国は支援していましたので、結果として立ち遅れました。

 

最後の5番目は、ユーザーサイドの問題です。日本の半導体産業が世界一だった時代は、国内の家電メーカーが世界的に競争力をもち、その家電メーカーに半導体を売っていました。その後、パソコンやスマートフォン半導体の大きなユーザーになったのですが、海外にいるこうした企業をお客さんとして獲得できませんでした。

 


<感想>
政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)によるJSRのTOB(株式公開買い付け)。本件も、過去のニッポン半導体産業凋落の反省に立つ、経産省による1980年代の復活を賭けた意地の戦いの一部のようにも見える。

 

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